第14話 完璧主義
「次どこいく?」
「うーん今日は疲れちゃった。私はもう戻るわ」
「そうか、またね」
「またね」
ふう、すっかりリュドシカとは仲良くなってしまったわ。まさかあんなに会話が弾むなんて。
私はリュドシカと店で数時間話してしてしまった。
「今日の収穫をメモに止めておかなくては」
「大変ですお嬢様」
「何、ポリューシラ今いいところなのだけど」
「殿下が失踪しました」
「え?」
私の予期せぬところでは変化が起こり、変化は私の目の前へと早速現れた。
「もしかしてこんなにはやく」
前回のループでも殿下失踪するということはあった。エレメナと共に二人で密会していたのだ。しかし時刻はいくらなんでも早すぎるのではないか。数日ほど早いはず。
「どういうことかしらね。とにかく私はここを離れるわ。ポリューシラは引き続き情報を集めなさい」
「了解いたしました」
「どうも嫌な予感がしますね」
私の勘がよからぬ状況を察知しているのである。
殿下の失踪と聞いてやはり思い浮かぶのはエレメナとの隠れ家であろう。隠れ家といっても信頼のできる護衛はつけているようだが、前回も殿下はあの場所に行っていたから、日時が違うのが違うがそこにいるに違いない。
さっそく私は隠れ家の近くまで来た。
「誰もいない?」
しかし隠れ家の近くには護衛も誰もいなかった。
「!」
その時背後に人の気配を感じた。
「久しぶりね」
「あなたは」
私と瓜二つのその外見、今回のループで出会うのは初めてであるため、久しく思えた。
「未来の私」
殿下失踪で、今一番頼りたいと思う人物の登場に私の心は少し余裕ができたのであった。
「あなた完璧主義過ぎよ」
「完璧主義? 私が? 何よいきなり」
しかし久しぶりの再会というのに未来の私が放った言葉は、私にとって不愉快な言葉であった。
「別に殿下を助けに行かなくていいじゃない。この変化が起きてしまったらもうおしまいなの」
「どうしたのよ」
このループの未来の私はちょっと様子がおかしいようだ。
殿下に一体何があったのだろうか。
「とにかく、警告しに来たのよ。もうこの回はあきらめた方がいい。無駄に自身の精神をすり減らすだけだわ」
「どういうことよ。あなたおかしいわ様子が」
「ちょっと心変わりがあってね。警告はしたからね。あとは任せるわ」
「ちょっとまって!」
そういうと未来の私は消えていくのだった。
「なんなのかしらあの人は、とにかく今は無視するべきだと思う」
未来の私を気にせず私は先に進んだ。
「ついたわ」
閑散とした湖畔にたたずむエレメナと殿下の隠れ家。人の痕跡は感じられないが、おそらく中に二人がいるはずだ。
「血痕!?」
なぜ血痕がこんなところに。
「記憶喪失」
「何?」
突如背後にローブをかぶった何者かが話しかけてきた。
「記憶喪失をすると、その先に何があるかわかるかい」
「あなたは緑陰の魔女」
これではあの時と光景は全く一緒ではないですか。どうして緑陰の魔女がこんなところにいるのでしょう。
「私はずっとあなたを待っていたのですよ。邪魔者は記憶を消しておいた」
「邪魔者とは……まさか未来の私!?」
「おかしい、狂っている、あなたはどこで道を間違えたのでしょうね」
「何がいいたいの?」
「様子がおかしいといっている!」
「っ!」
その時緑陰の魔女が私にとびかかってきた。コイツ魔女なのに接近戦タイプだったの?
「邪魔者が消えたから、あなたはここでおしまいよ!」
「ひえ!」
私は圧倒的な魔女の圧力にひるむしかなかった。
「そこまでよ」
「うわっ」
緑陰の魔女が伸ばした手は私の目の前で止まることになった。まるで見えない壁に阻まれたかのように動きが止まっている。それにしてもこれは……。
「エレメナ!? どうしてここに」
私を助けてくれたのはまさかのエレメナだったのである。
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