第12話 新しい価値観 童話

新たな価値観を探しにいく。


 こう見えて私は王宮内での身分はそれ相応のものだ。優雅な朝食を済ませた後は、創作活動にふける。私も歌に関する見識眼はそれなりにあるのである。


 歌詞を書く中で、普段と比べて私の創作力に違和感が発生していることに私は気づいた。


「はあ、全く進みませんね」


「ミケレ様、どうかいたしました? 顔色が優れませんのね」


「ポリューシラ、お気遣いありがとう、でも平気よ、全然気にする程のことではありませんわ」


 私の創作活動には侍女のポリューシラが傍にいてくれる。彼女洞察力はいつも私にいいインスピレーションを与えてくれるのだ。


「それならよかったです。それでは約束通り本日私が面白いと思った童話の話を聞いてもらえませんでしょうか」


「お願い!」


 ポリューシラは目にかかる白髪の髪をはけて、本を取り出す。本が好きな彼女は度々私に気に入った話を語りかけてくれるのである。


 私のインスピレーションが与えられた理由としては、ポリューシラの語りかけが大きな要因であった。


「それではご清聴願います。今回このポリューシラが語りだすのは、とある契約の先に新たな価値感を見出した魔女の話でございます」


 魔女、私は最近緑陰の魔女と遭遇した。何か対抗策が浮かぶかもしれない。これはまたいいタイミングですわね。







 全てが繋がっている成功のルート、それは奇跡とも呼べる都合のすべてが繋がり、正解へとたどり着くのである。









はるか遠い昔、国と親密な関係を気づき、安定した地位と引き換えに契約をした魔女がいました。契約の内容は、王女の寿命を延ばすというもの。魔女は自身の屋敷で寿命を延ばす構造を研究していました。


 長きにわたる魔女の研究は遂に実を結び寿命を延ばす薬が出来上がりました。早速王女様の元へ向かう魔女、しかし突如何者かに襲われます。


 そのものは魔女に契約を言い渡していた宰相の側近の騎士でした。そう、宰相に魔女は騙されていたのです。


 宰相は地下深くに魔女を軟禁し、その存在を世間において闇へ葬り去りました。宰相にとって利用し終えた魔女は手柄を立てるのに、邪魔な存在でしかなかったのです。


 軟禁された部屋で魔女は自身の悲劇を嘆きました。しかし不思議と笑みを浮かべていました。私がこうなっても別に困る人はいない、その魔女はいつもつつましく生きていました。


 たとえ自分がそんな目に合っていても、決して憎悪を抱くわけでもなく、自身の運命を受け入れたのです。


 日は明け暮れ気が付けば魔女の軟禁していた部屋に王女様が現れました。王女様はひそかに魔女に好意を抱いていました。そして本質を見抜く力は人一倍強かったのです。


 宰王の策を見抜いていた王女様は魔女をひそかに助け、以降自分の侍女として使えさせました。姿や立ち振る舞いを改めさせて。


 宰相にもやり返すことはせず、二人は平穏なスローライフを送ることになるのでした。








「えーとどうリアクションすればいいのかしら。王女様と魔女はいったいどんな関係かしらね」


「お気に召しませんでしたか」


「そんなことはありませんとも。ただあまりにその後の展開が平坦な話でリアクションに困っただけでしたわ、もっと宰相に復讐するとかですね」


「すいません」


 私ははっきり言って退屈だったということを抑えながらもオブラートに包んで感想を話すのだった。

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