第10話 圧倒的聖女の力

「こんなの治療のしようがないじゃない」


 私は基本的である程度の治療魔法が使えるが、殿下は凄まじく重症で効果が通用しなそうだった。


「どうですかミケレ様、殿下を治せそうですか」


「うるさいわね、あなたは殿下の心配をする必要はありませんのよ。ただかなり容態は私の手では難しいは、医療班を手配しなくては」


「でもそれじゃあ間に合いませんよね」


「じゃあ、他にどうするっていうのよ」


 何もできないエレメナのくせに私に何回も質問してくるなんて生意気な。


「私に任せてください」


「え? あなた何を」


 任せてって、あなたに何ができるのよ。ちょっと歌がうまいからって殿下にまぐれで気に入られただけのあなたが。


「!」


 その時エレメナは息を大きく吸う。凄い集中力である。私が今までエレメナを見てきた中でここまで雰囲気は初めて出会った。


「私の全力を殿下に捧げます!」


 次の瞬間エレメナの歌があたりに響き渡るのだった。周囲の枯れ葉はみるみるうちに成長し、まるで周囲のありとあらゆるものにエネルギーを与えるかのような神秘的な歌声出会った。


「こんなことが」


 私は完全にエレメナに敗北感をこの時感じたのであった。


「うっ、エレメナ!?」


「殿下!」


 あの状態から殿下は完全に回復したのである。そして最初に殿下が見たのはエレメナ、気づけば二人は抱き合っていた。


「こ、こんなの見てられない!」


 私はその場から逃げ出した。現実を受け入れることができなかった。エレメナに完全敗北した挙句殿下を心の底から殿下を奪われたと感じたのだった。






 


 逃げ出した先にある何もない道で、私はただうずくまっていた。


 かなりの時間が経過したその時だった。


「おやおやお嬢さん、随分とやつれた様子で」


 絶望した表情で逃げ去った私の前に現れたのは緑色のローブを来た人物だった。


「緑陰の魔女!?」


「さよなら」


「いやあああああああ!」

 

 緑陰の魔女が放つ魔法の光があたりを覆う。その時私の意識は反転する。




「こ、これは」


 目の前にはまたまた荒野が広がっていたのである。


「またやってしまったわね」


 私の命危険に反射して強制発動する崩壊のオーラ、頭がおかしくなりそう。


 崩壊したあと、過去へ戻るまで少し間荒廃した砂漠を見ることになる。どんな気持ちでこの光景を眺めていればいいのかわいまださっぱりわからない。


「とまあ私の無意味なリアクションはここまでということで、尋ねさせてもらおうかしらね」


 私は目の前にいる見知った女性をにらみつける。


「私も随分と嫌われたようだわね。まさか過去の私にそんな表情で見られるだなんて」


 そう私が今対面しているのは未来の私、殿下との口づけを邪魔した未来の私である。





「冷静に考えてみたらおかしいことよ。殿下を大好きな私が口付けをする場面なんて見たくないものよね。未来の私、あなたは私にとって敵だわね」


「敵だなんてひどいじゃないの? 私は本当にあなたを助けたいと思っていたんだけど。ただあの時はとっさに我慢ができなかっただけなんだよ」


「そうなの? それで気が済んだかしら。おそらくあそこが私にとって殿下に近づける最後のチャンスだったのに邪魔したわね」


「そんな弱気な言葉を言うなんてらしくないんじゃない? ただあなたもそろそろ知ってきたみたいね、あのエレメナの圧倒的ハイスペックさを。あなたはあんな化け物を相手に殿下を取り合っていたのよ。身の程は知ったかしら」

   

「ふん、身の程どころか、もうあきらめたわ」


「は?」


 あきらめたといった言葉を発した瞬間未来の私の表情と雰囲気が変化した。


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