第7話 やっぱり

 告別式に行きました。


 彼の故郷は東北です。店のマスターが車を出すとのことで、薬局の前で集合し店長と常連客のSさんと向かいました。

 他の常連さんも別のところに集合し、教授は家族で前日から新幹線で行きました。


 店長とは最後まで悩んでいました。

「あの明るい元気な彼の印象のままでいたいのですよ」

 僕も実はそう思ったのだけれど、

「まだ信じられないし、告別式に行ったら納得できるかもしれない」

 それも僕は思っていました。


 葬儀は亡くなられた方と同じく残された人の為にもやるもの、と誰かが言っていましたが、彼の不在が確認できるかもしれない、そんな気持ちもありました。


 北に向かうにつれ会話が途切れ、車内は静かになりました。

 だんだん現実になる感覚がありました。


 トイレではなく煙草休憩を入れながら、その目的地まで着くと葬祭場より先に教授ご一家と会い昼食をとりました。

「お父さんと弟さんはまだしっかりとされていたのですがお母さんが…」

 昨日のお通夜に行った教授はそう話してくれました。

 覚悟しておいてくださいね、そんな感じに事前に知らせてくれたのでした。


「行きましょう」

 マスターが意を決するように立ち上がると、僕らもバッグの中の香典や携帯電話のサイレントモードを確かめてから立ちました。


「堀さん、おそらく僕らが彼にあった最後の人間です。それをお話したらきっとお母さん…」

「そうだね、挨拶だけにしよう『飲み仲間で東京から来ました』それだけにしようね」

 長くなるという理由ではなく、さらに悲しみを増すだろうし、我々もあの元気な姿をあらためて思い出さないといけない。

 

 会場には彼の写真があり、ご親族が出迎えられていました。

 店長と僕は打ち合わせ通りご挨拶だけをしました。

 お母さまはすでに泣かれていました。

 

 葬儀の間、お母さまの泣き声がずっと聞こえていました。

 親より先に逝くものではないな…僕より若いものが逝くのはつらく苦しいな…と心底感じました。


 棺に花を入れる際、少しむくんだ顔を見ました。

 やっぱり彼でした。


「顔、見た? 」

 店長に訊くと、

「○○だったですね、すこしむくんでましたね。外傷はなかったようですね…」

 そう言いました。

 

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