第5話 「異世界」のような
翌週の火曜日の朝、店長がレジを開けたあと近づいてきました。
「堀さん、○○死んじゃったって…」
誰もがそうだと思いますが、これはきっと悪い冗談だと思いますよね。
ですが何度も店長と言葉を交わしあい、僕はやっとそれを理解できました。
後ほどわかったことですが、彼の部屋はエアコンとテレビが点いていたが電灯は消えていたとのことです。
脳出血で倒れたそうです。
あの土曜日の夜だったと聞きました。
教授から焼鳥屋のマスター、そこから店長に連絡がいき、そして僕まで来ました。
その日以来考えてしまいます。
なんで彼なのでしょう。まだ若いのに。
もっとおいしいお酒も飲めたし
おいしいものも食べることができたのに。
結婚はともかく、若い女の子と素敵な時間を過ごせたよね。
面白いこと、楽しいことをこれからも経験できたのではないかな。
こんな考えが回転するのですね。
残念だな、かわいそうだなと思う気持ちと、僕は彼の不在ということにも戸惑うのです。
あの日以来、ここは彼のいない世界になったのだな…と。
継続している世界なのだけれど、今はやりの「異世界」のような気がするのです。
転生ではないですが、あの日から僕らは突然、彼のいない世界に
“僕らのほう”
が飛ばされてしまい、彼の不在を居心地悪く生きているような感じなのです。
明るく
「じゃあ、また! 」
とタクシーの窓を開けて言った僕より若く元気だった彼がいなくなったのです。
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