第4話 気をつけてね
教授と言われている常連客もかわいい保育園の次女と小学一年生の長女、きれいな奥さんを連れてきていました。
教授は彼と同年で実際にとある大学の数学の准教授なのです。
「○○来るって」
マスターが教授に伝えると、お子さん達も奥さんも喜んでいましたね。
教授と彼は家族ぐるみのお付き合いで、何度か彼は教授の家に泊まったことがあったそうです。
でも当日、僕らはちょっと面倒くさいな、疲れているのにな…そんな気がしていました。
マスターも
「○○はまた競馬新聞持ってきて語るよな~」
とつぶやいてました。
しばらくすると彼が来て、
「堀さん、お店では何度もお会いしていますがここでは久しぶりですね~」
と明るく話しかけてきました。
あの日は何を話したかな、おそらくまたバブルのことだと思う。
店長も僕も彼も土曜日だし、少し多めに飲んで店を後にしました。
僕らは地元なので歩いて帰るのだけど、彼は私鉄で2つほど離れた駅にマンションを借りていましたからタクシーで帰ります。
これもいつものことだけど、大通りに出てタクシーをつかまえて、僕と店長は彼がそれに乗るまで見ていました。
彼のほうがずっと若いしお酒も強いけれど、なんとなくね。
「じゃあ、また! 」
彼が後部座席の窓を降ろし、片手をあげて言いました。
「じゃあね、気をつけてね」
薬局に来る人はたいていケガをされているか、体調が悪い人です。
「気をつけて」
これは習慣になりました。
お店を出ていかれる方には、そう送り出させていただいています。
自分の店でもないのに、そう言ってしまうこともかなりあります。
今回はタクシーに乗せただけなのだが自然に僕と店長は言いました。
「気をつけてね」
タクシーは彼を乗せて深夜の街を走っていきました。
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