第3話 カウンターの左端

 薬局にもよく来てくれました。

 胃薬や栄養剤を買っていきましたね。

「これから店(焼鳥屋)?」

「ええ、ちょっとだけ」

 そんなことがよくありました。

 そうゆう意味だとお得意様にもなっていました。


 婚活をしていて、何かに登録もしており、一度か二度若い女性をお店に連れて来たことがありました。

 かわいい子でしたね。

 その後はどうしたか、飲み仲間は気を使ってつっこまなかったですけれど。


 あと僕の嫁や娘がかわいい、きれいだと

「いいな~俺も結婚したいですよ」

 と酔いながら言ってましたね。


 僕から見れば六大学を出て、独身でお金があって自由があって逆にうらやましいな、と思っていました。

 それに聞くところによると地方の実家も不動産会社を経営していて、彼はいわゆるいいところの坊ちゃんということであり、女性にも苦労しないのではないかとも感じていました。


 多少小太りだけど一度ものすごいダイエットをしてね、かなり細くなりいい男になっていたのです。

 ちゃんとすぐにリバウンドもしていましたが。


 性格はとにかく明るくて、だけどちょっと面倒くさい。

 静かに飲みたいのにやたらと明るい。

「いやー堀さんと飲めるの今日は楽しみにしていました」

 とかいいながら饒舌に話すので常連客の中では

「若くていいやつだけど面倒くさい」

 それが彼の印象でした。

 よく我々おっさん達につきあってくれたし、こちらもいろいろな意味で可愛がっていました。


 空いていればカウンターの左端の席にいつも座り、レモンサワーを飲んでいましたね。


 店に入ると奥のカウンターに彼がいた場合、僕は無条件にその横に座らされ、常連の皆様がゆっくり飲めるよう彼の相手をしていました。

 こちらも疲れているのですがね。


 その月の店長との飲みは土曜日でした。

 飲んでいると彼から店長と焼鳥屋のマスターにショートメールで連絡があり、

「今から行きます!」

 とのことでした。


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