第5話 合格発表

さて、次は武術の試験だ。が、


「アリエル、お前もやるのか?」

「グランも少しはやるみたいだし?ここで私がすぱっと決めて首席を掻っ攫ってやるわ!」

「ふーん、まぁ好きにすれば?」


さっきの魔法で萎縮しなかったのは褒めてやるが・・・。こいつ、武術なんてできたか?



「72番、始め!!」

「ていやーー!!!」

「じょ、嬢ちゃん!?本当にやるのかい?構えからしててんで素人だろ?」


アリエルが持っているのは槍なのだが、


「ぷぷっ、アリエルー、持つ方逆だぞー」


どうすれば間違えるのだろうか。槍の穂先を何故か彼女が握っている。


「え!?あっ、こっちを持つのね・・。どうりで手が痛いと思ったわ・・。っていうかもっと早く教えてよね!!」


周りからはクスクスと笑い声が聞こえてくる。

アリエルは顔を真っ赤にしながら向き直ると、


「こ、これで準備オッケーね」


ガガガガガッ


彼女は槍を引き摺りながら走り出すと、


「あいたっ!!」


槍の先が段差に引っかかって転んだ。

そしてそこにコツッと試験官である騎士団員の剣がぶつかり、


「ふにゅ〜・・・・」

「・・・・・」


アリエルはあっさりと敗北した。

彼女は試験官にリングの外に運び出され、治療を受けると何事も無かったかのように俺の所へくる。


「ふぅ、なかなか強かったわ。貴方も気を付ける事ね。」

「安心してくれ、俺はあんな醜態を人前で晒すことは無い。」

「174番」

「まぁ見てろ」


俺はリングに上がる。


「174番、始め!!!!」


まずは様子見だな。ダグラスとやる時と同じにやったら相手を殺しかねない。

俺は軽ーく足を踏み出す。


(ん?構えないのか?)


試験官は剣を右手に携えて構えもしない。


(なるほど、この程度なら構えるまでもないと?)


俺はそのまま試験官に肉薄し、剣を横薙ぎに振るう。


「は、はや!?ぐっ!!!」

「は?」


試験官がリングの外に吹き飛ばされた。


「おい、今の見えたか?」

「早すぎて全然見えねぇ」

「いつ動き出したのかもわかんねぇよ・・」

「ムカッ、私へのあてつけかしら?随分と手を抜いたのね、お父様と戦う時と全然違うじゃない・・・」

「こんなのに他の受験生は手こずってたのか・・・。信じられねぇ。・・・あの、勝ったんですけど?」

「あっ、ご、ごめんなさい。試験終了です、お疲れ様でした・・・」


試験が終わった生徒は順番に帰る。


「合格発表いつだっけ?」

「確か・・・一週間後くらい?帰ったらお父様に聞いてみましょ。なぁに?心配なの?」

「そんなつもりで聞いてない。単純に気になっただけだ。」

「ふーん・・・」

「なんだよ」

「なんでもないよー!」





—————————————————————


実技試験 一位 グラン=エルクリア 300点


     二位 アリエル=エルクリア 200点

           .

           .




「今年は凄い子が入ってきたね・・」

「ですな。魔法試験だけでなく武術試験も満点評価とは・・。いやはや、にわかには信じられませんな。」

「間違いなく首席合格でしょう?」

「いえ、それが・・」






合格発表日当日、俺たちは試験日と同じように学園へ向かい、掲示板に受験番号が張り出されるのを見守る。


入試の成績順にクラスが発表されるため、貼り出される受験番号が早い程入試の成績が良いという事だ。


72••••••••174•••••••••••••


「は?」

「いやったーーーー!!!!!あははっ、グランに勝った!!お父様、グランに勝ったわ!!!」

「おお!流石は私の娘だね!!」

「そ、そんな馬鹿な・・・」



グラン=エルクリア

算数 98/100 社会 191/200 道徳 -100/100


アリエル=エルクリア

算数 92/100 社会 168/200

道徳 100/100




グランの道徳での解答のほぼ全てが、

気に食わないなら殺せば良い。


だったらしい。(採点者談)



学園創設以来初となる全問珍解答は、後世にも語り継がれる事となったとかならなかったとか。

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