第4話 試験

「で、何の用だ?」

「お前のような平民が!伯爵令嬢アルティ様と公爵令嬢アリエル様に口をきくなぞ、身の程を知れ!!」


俺の肩を掴んでいたのは、この国の者特有の金髪に、吊り上がった目、全体的にまん丸な体躯をした男だった。


「本当に誰?」

「なっ!?」

「あーあ言わんこっちゃない・・・」


隣で女のため息が聞こえるが無視する。


「俺は子爵嫡男チャルロス=ブチャイクだ!!」

「あっそ、俺は人の名前を覚えるのは苦手だがお前の名前は覚えたよ。ブサイクくん。」

「むっきーー!!!!今日は時間が無いから見逃してやるが、次会った時は覚えとけよ!!!」

「本当だ、時間無いから急ごう」





試験は筆記試験と実技試験に分かれている。

筆記試験は基本的な計算や道徳、歴史や地理を問う問題だ。ダグラスが雇った教師に嫌ってほどに叩き込まれた知識を元に問題を解いていく。

学園を受ける生徒は筆記試験は基本的に点数を落とさないため、俺も頑張った。

だが道徳の問題だけは中々に難しい。

アリエルは思いやり?を持てば解けるなぞほざいていたが、くくくっ、これはあいつ、一問も解けないんじゃないか?


「試験終了です。ペンを置いてください。」


終了の合図が静寂を破る。すると会場から静寂が消え、一斉に音が生まれる。


「ふぁ〜、やっと終わったぜ!」

「中々難しかったね〜」


知人だろうか、受験生同士で感想を話し合っている集団が散見する。これを避ける為に受験番号を分けているのだろう。他の受験生も緊張の糸を緩める。


「次は実技試験を行います。校庭に集合して下さい。」


さて、本題はこれだ。

実技試験は魔法と武術に分かれる。

どちらか一つを選んでから試験をするのだが、

どちらも選ぶと加点を得られるらしいのだ。

受かっていると思うが筆記試験で落ちたとなれば笑い者だ。

俺は一応どっちもやる、万が一落ちれば笑い者じゃ済まないしな。



校庭には続々と生徒が集まってきた。俺たちも番号毎にまとまって座らされると、数名ずつ名前を呼ばれた生徒から遠くに見える案山子のような的に向かって魔法を放っていく。武術専攻の受験生は離れた所で騎士団員との模擬戦だ。

俺は魔法のテストから先に行うとしよう。


「次72番」

「はい!」


金髪の少女が歩を進めた、アリエルだ。

彼女はチラリとこちらを振り向くと、ニヤリと笑った。


(?)


何故だろうか、凄く腹が立つ。


魔法は使用者の魔力に攻撃力が依存するが、詠唱をする事で魔法の発動を補助し、位の高い魔法を使用しやすくなる。


「プチエクスプロージョン!!!」


頭程の大きさの火の玉が、寸分違わず案山子の頭に直撃すると大爆発する。


ドォーン!


爆風と驚きの声がここまで届く。


「すげぇ!」



俺も初めて見た。彼女の顔から察するに、隠してたな?


「ふふぅん!どうよ!私はグランよりも凄いんだから!!」

「そんな訳あるか」

「じゃあ見せてみなさいよ!」

「わざわざこんな目立つ所でやる必要ないだろ」

「じゃあグランは私より弱虫決定ね!」

「ちっ、・・・刮目して見てろよ?」



「次、174番」

「はい」


俺は段上に上がり、試験官に質問をする。


「どうすれば満点を貰えますか?」

「む?満点狙いか!はっはっは!そうだなぁ、あの案山子に魔法を命中させた上で消滅させる事ができれば満点をくれてやろう!」

「アリエルと同じようにすれば良いのか・・・。分かりました。」


ふっふっふー、アリエル、これを見て驚け!

お前が使えなかった魔法を見せてやろう。


俺の手に集まった魔力が天に昇る。

空が陰り、太陽を遮断した。


「空が・・」

「こ、これって」

「雷魔法!?」

「ちょ、え?グラン!?隠してたの!?」


「ほら、落ちろ」


轟音が耳をつんざき、光に目が眩む。

目を開けた時には俺の前にあった案山子ごと地面が陥没し、消滅した。


「おお〜、初めて使ったけどなかなかの威力だな。これなら満点では?」

「・・・え?あ、ああ・・・」


試験官の反応がちょっと悪いが、まぁ問題ないだろう。

俺はアリエルに向かって鼻笑いをしてから

意気揚々と自分のいた席に戻った。

悔しいか?クックックッ。

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