第3話 入試会場
「二人とも準備はいいかい?」
「ああ」「うん・・・」
「ん?アリエル、緊張しているのかい?」
「だだ、だって、もし落ちちゃったら・・・」
「あっはははは!!!」
「うふふふふっ」
両親はアリエルの言葉に声を上げて笑った。
「アリエル、自信を持って受けておいで。もちろんグランもね。」
「あんたより強くないと入れないってのか?」
「へ?」
ダグラスがキョトンとした顔をする。
因みにダグラスはこんな美青年のような喋り方をするが、イカつい刈り上げ金髪にもじゃ髭を生やした筋骨隆々のイカついジジイである。
決して爽やかイケメンなどではない。なのになんでこんな喋り方をするのか、母であるヘランに聞いたら、
「アリエルが怖がるから、らしいわよ」
だそうだ。なんでそうなったのかは全く分からんし、正直キモいが、それを言ったらゲンコツを食らったのでもう言わない。
話が脱線した。
俺は自分が強いのを理解している、それを大丈夫か?だと?舐めるな。お前以外に負ける事は無い。絶対にない!!!
「ああ、そういう事か!大丈夫大丈夫、心配してないから」
「ふん、当然だ。あっ、こ、こら!撫でるな!!」
「あー、照れてる〜」「うふふっ、可愛いわねぇ」
「う、うるさい!!」
学園はここから十キロ程離れた所にある。
まぁこの程度の距離など俺にかかればちょちょいのちょいだが、アリエルがあまり運動が得意では無いため今日は馬車だ。
学園は全寮制で貴族や王族までもが寮で生活をする。なのにメイドや執事は入れないとか言いやがるのだ。ふざけている、この校則を作ったやつは貴族を羨む平民に違いない。
まぁその代わりに主従関係にある貴族の生徒同士でそういった事を代替するらしい。
俺とアリエルは異性だから免除だ、セーフ。
あの我が儘娘のお手伝いなぞ死んでもごめんだ。
「・・・・はぁ、つまらん」
「見て見て!!凄く早いよ!!」
「そんなに早く無いだろ・・」
一時間もしない内に学園に到着した。
入り口の門は受験生でごった返していたが、俺たちに気づくと道を開ける。なんせ俺たちの馬車には剣と盾、武力を表す公爵家の家紋が付いている。俺達よりも爵位が上なのは王家ぐらいだろう。
因みに俺は公爵家の家紋を付けていない。
ダグラスとヘランは猛烈に反対してたが押し切った。泣いて足に縋られても嫌なものは嫌だ。
理由は単純、目立つから。
暗殺者が人前で目立ってどうする、影に潜み、獲物を狩る機会をじっと待つのが俺達暗殺者だ。こんな金ピカの刺繍なぞ目立って仕方がない。しかもこの家紋ダサい、本当にダサいのだ。
「受験生の皆さん、こちらで受験票を確認しますのでお並び下さい。確認後は中にある掲示板から自分の番号の教室へ移動をお願いします。」
「あっちみたいだ、行こう」
「うん、お父様、お母様、行ってきます!」
「ああ、気を付けてね」
「頑張ってらっしゃい」
「ふむふむ、俺たちの番号は174と72か。」
「なんで一緒に申し込んだのに違う会場なんだろうね?」
「それはね、進行をスムーズにするためよ」
「誰だお前?」
「なっ!?し、失礼ね!私は伯爵家長女のアルティ=メギルーアよ!」
「ふーん」
「な、なんて失礼な平民なの!?私以外にそんな事したら打首よ!?」
「そりゃ怖いな。まぁそんな事になったら逃げるけど」
「アルティ!久しぶり!!」
「久しぶりねアリエル!でも、今日は友達じゃなくてライバルよ!」
「アリエルの友達だったのか」
「うん!お夜会で仲良くなったの!グランは行きたくないって来なかったから・・・」
「へぇ、あんたグランって言うのね。アリエルの付き人かしら?でもそんなに失礼な態度を続けてたらアリエルの名誉に傷が付くわよ?」
「お付きじゃないし、しかもこいつに名誉なんてあるか」
「なっ、グランひどい!」
そこで後ろの受験生が俺の肩を掴んだ。
当然気付いていたが、正直面倒臭いからそのままにした。避ける方が無駄な労力だ。
「おいお前!!」
「今日は騒がしいのが多いな・・・」
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