第6話
「各隊出揃ったな」
俺の横にも幾人か並ぶ。
その中には
「ふん」
「あはは」
三沢さんもいた。
「基本的に三番隊は適合率40〜60の人ですから」
可奈さんが補足するように教えてくれる。
「これって各隊によって役割があるんですか?」
「そうですね。例えば私達三番隊は偵察といった任務が多いですね。海途君のよく知るセイラ様の所属する一番隊なら、主に前線で戦いますね」
「やっぱりセイラさんって強いんですか?」
「そうですね。うちのエースですから」
「凄いですね!!」
「セイラ様の活躍は私達の界隈で有名です。だからこそ、海途君に自然と注目が集まってしまいます」
「あはは、過剰評価ですね」
「そんなことない、と言いたいですが、現実は非情です。海途君の才能は一般的でしょう」
「そうですね」
自分でも知ってることだが、なんだか実際に言われると少しショックだ
「ですが」
俺の思考を遮るように
「私達の求める世界は戦いのない世界。その世界で必要なのは力ではなく優しさ。目的と過程を履き違えてはいけません。なら、私達に最も必要な人材は、海途君のような優しい人なのでしょう」
「俺が優しい、ですか?」
「ええ。でなければセイラ様とカレン様が気にすることはありませんから」
俺が優しいねぇ
「どうでしょう。俺は自分のことを良い人間とは思えません」
「それはどうしてですか?」
「俺は誰かのために、誰かに力を振います。本当に優しい人なら両方を救うはずです」
「そうでしょうか?それで手遅れになってしまえば本末転倒。私には誰かのために動ける人こそ、と思います。そんな理念があるからこそ、こうして正義の味方という組織が生まれたのですから」
話は平行線。
「中々分かり合うって難しいですね」
「そうですね。でも、それでも私は平和な世界が見たい」
「俺もです」
「意見が一致しましたね」
「そうですね」
短い時間だったけど、可奈さんと仲良くなれた気がした。
「むむむ」
遠くからこちらを見ているセイラさんに気付かずに。
「つーん」
セイラさんがセルフ擬音で怒りを表す。
「えっとー」
「随分と可奈さんと仲良さそうだったね」
これは
「嫉妬ですか?」
「そうですけど!?」
隠さないな、この人。
「セイラさんも隊員の誰かと仲良くなったのでは?」
「……ない」
「え?」
「なれてない!!」
怒ったと思えば今度はどんよりとした顔。
コロコロと表情が変わるなぁ。
「私って一応ここのトップの娘だからかな。ここに来て一年、みんな
「それは……」
まぁ美人でトップの娘さん、それに実力もトップクラスときたら気を遣わない方が難しいだろう。
「それで言ったら俺もそうじゃないですか?」
「そう?私に気を遣ってる?」
「はい!!」
「この時点で他とは違うよ」
今度はニッコリとした顔になり
「可奈さんは良い人だから、困ったら頼るといいよ。あの人世話焼きだからきっと助けになってくれる」
やはりセイラさんといると何だか落ち着くな。
「ただし!!」
迫真
「絶対に一番隊まで上がってくること!!絶対だから!!」
「へい!!」
「返事はハイ!!」
「サー、イエッサー!!」
「よし!!」
二人の笑い声が廊下に響いた。
「三番隊の主な任務は偵察。悪の組織のアジトを突き止め、そこに侵入し、情報を集めます」
最初に思ったこと
「はい!!」
「何ですか?海途君」
「捕まったらどうなりますか!!」
「そうですね」
可奈さんは顎に手を当て
「拷問」
「ひぃ!!」
「される前に帰還します」
どゆことだ?
「光の力と闇の力に共有してることですが、体に大きなダメージを受けると、強制的に同じ力の多い場所に転送される力があります。そのため、捕まれば自傷して帰還します」
思ったよりも単純でハードな内容だった。
「ちなみに痛いですか?」
「めちゃくちゃ痛いです」
辞めたいと、そう思った。
「なら死者は出ないということですか?」
俺の隣の女の子が手を上げる。
年は高校生くらいか?
「稀ではありますが、死傷者もでます。それは、圧倒的格上からの攻撃です」
「どうしてでしょうか」
「光の力で私達の身体能力は大幅に向上しています。今の私達は銃で撃たれようと、雷に打たれようと軽症ですみます」
いつの間にか俺は人間を辞めてたらしい。
「ですが、そんな力を持った圧倒的な格上の攻撃は核すらも凌駕します」
人間兵器やん。
「そんな攻撃を食らってしまえば、普通に死にます」
でしょうね。
「まぁ三番隊はそのような敵と戦うことはないので安心してください」
「質問いいですか」
「どうしたんですか?海途君」
「それはフラグですか?」
「違います」
それから可奈さんはもう少し説明を続け
「あ、それと、一度転送されると一時光の力が使えなくなるので気をつけて下さい。これで説明は終了です」
その言葉を紐きりに、終了した。
「次は自己紹介ですね。一時的な隊ではありますが、今後バラバラになっても親睦は深い方がいいですから」
可奈さんはニッコリと笑い
「改めまして、三番隊隊長の西園可奈です。一応カレン様の秘書をしていますので、何かあれば私に教えて下さい」
周りからパチパチと拍手がなる。
「次は海途君お願いします」
「え?はい」
キラーという程ではないが、唐突なパスに少し驚く。
「えー、初めまして、海途陸って言います。苗字と名前から、間をとってよくレック◯ザと呼ばれます。これからよろしくお願いします」
パラパラと拍手が鳴る。
出だしとしては中々よいスタートではないだろうか。
「次は僕の番ですね!!」
先に行かんとばかりに三沢さんが一歩前に出る。
「僕の名前は三沢健斗。かの有名な三沢グループの一人息子です。あの可奈さんと同じ隊員になれたこと、非常に嬉しく思います。是非、親睦を深めるためにパーティーでもしましょう。もちろんお代は僕が持ちますので」
大きな拍手が鳴る。
今の自己紹介ってより、ただのナンパじゃね?
「はぁ」
すると、説明の時に質問していた女の子がため息を吐く。
「何しに来たんだか」
確かにその言葉は俺も同意だが、似たような理由でここにいる身としてはかなり刺さる。
そんなことを考えていると、女の子と目が合う。
「あ、こんにちは」
「初めまして」
互いに軽く会釈する。
こうして見ると可愛い人だな。
ショートの青髪、この年で染めたのかな?
「一応地毛です」
「珍しいね」
「こんな力がある世界で普通も何もないと思いますが」
ど正論パンチされた。
「あー、今のうちに自己紹介したら?」
「そうですね」
女の子は一歩前に出る。
「私の名前は
テキパキとまるで自己PRのように話終えるソーニャ。
多分年下だよね?
「ソーニャ——さんは、何歳?」
「今年で17になりました。敬語は結構です」
「そう?ならそうさせてもらうな」
久しぶりにタメ口になった気がする。
「足手まといになると思うけど、よろしくな」
俺は手を前に出す。
「いえ、ここにいる人は先程のゴミを除いて同じ志を持った人達と思っています。お互いに切磋琢磨していきましょう」
彼女が俺の手を握りしめる。
さっきのゴミの同類の俺としては、この握手がとても辛く感じるが
「ソーニャとは長い付き合いになりそうだ」
「何故です?」
「カッコつけて言ってみたかった」
「面白かったですよ」
仲良くなれる気がした。
その後も何人かの自己紹介を終える。
今は休憩時間であり、例の大企業に設置されている食堂で、唯一仲良くなったソーニャとご飯を食べている。
「どうしよう」
正直名前覚えられん。
可奈さんとソーニャ、それと三沢……健太郎だっけ?
精々これくらいだ。
「道端で話しかけられえたら気まずいってレベルじゃねーぞ」
「大丈夫だと思いますよ?光の力が適合できる人は稀です。その中でも組織に合う人間を厳選するとなれば、かなり出身地はバラバラになりますから」
「なるほどねぇ。え?でもそれだと移動とか大変じゃね?」
「確かにそうですけど、その分貰えますので」
ソーニャが指で金のマークを作る。
「意外と下世話だな」
「事実ですので」
こんな美味いの食ったことがないと思わせる程のカツカレーを食べながら喋る。
「感動だね」
「私もです。あまり裕福な家系ではありませんでしたので、このように高級なものは初めてです」
少しずつ共通点も見つけながら、楽しく食事する。
「それにしても陸さんはセイラ様とお知り合いというのは本当なんですか?」
「ん?ああ、そうだな。多分あの日の俺は宝くじ一等と同等以上の運があったな」
「やはり強いんですか?」
真剣に問われる。
「最初に言っただろ?足を引っ張るって。適合率も50%だし」
「普通ですね」
「やっぱそうなんだ」
逆にここまで普通な方が珍しいのか?
「ですが、陸さんが誰であろうと、共に世界平和を目指す者。これから頑張りましょう」
「そうだな」
こうして俺は新たにできた仲間との親睦を深め、楽しく仕事ができると確信でき
「ねぇ」
ゾクリ
「ご一緒してもいいかな?」
わぁ、とっても綺麗な声だぁ。
「ど、どうもセイラさん」
「どうも、大親友を差し置いて昼食を食べてる陸さん」
そういえば、楽しい時間ってのはすぐに終わると古事記にも書いてあった気がしただけの俺であった。
正義の味方と悪の組織に所属することになった @NEET0Tk
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