第9話 カタツムリの角のように敏感
「結構だよ、僕は飲まないから。」
グラスを持ってきて、クリスティに注ごうと思ったとき、彼女はそう言った。彼女は飲まない女子には見えず、警戒心から飲まなかったのかもしれない。深夜に帰宅し、女子二人が酔っていたら、何も起こらないとは言い切れないだろう。
彼女は窓際に立ち、タバコに火をつける。その頃には、雨はそれほど激しく降っていなかった。ルービンシュタインの演奏が終盤になった時、また飲もうとしたら、すでにビールを一本飲み干していた。 瓶を手に取り見てみると、ミュンヘン製、355ml。
「18歳になってから家を出るなんて、さすがね。」彼女は目を細め、年上の優越感で半ば冗談のようにこう言った。
「実は最初の頃、落ち着かないかも。料理や家事なんて放課後の多くの時間を奪った。」私は歩み寄り、手を窓枠にもたせかけている。
クリスティは再びタバコに火をつけてくれる。ただ、この時は何度か、風が吹いて火が消えてしまった。ほとんど火がつかなかった後、私は彼女の手に親しげに触れた。その瞬間、人は好きな人の前では、カタツムリの角のように敏感になれるのだと感じた。
「時々、凛ちゃんがうらやましい。」
「なんで?」
「強いオーラを放っていて、やりたいと思ったことはしっかりやるという印象を受けた。」
「クリスティもそうだと思うよ。」
「好きな人の前では、常に劣等感があるのかもしれないね。」
島の縁に沿って 亥浪 @azeredorb
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