第22話 異変
「ふむ。イゲレクシィが続いてくる。」
今回の賢者モンスターは金属と肉の混ざった様な姿だ。色々な種類が居るらしい。斬里華が攻撃した際、金属の巨大な足を背中から生やし、素早く移動して回避した。イチゴマークの方は先ほどの爆発でかなり数を減らしている。
「ま、この間の復讐が出来るからいいけど、呼べば素直に来るとは思わないでね」
そう章吾に言うと、斬里華は接近戦へと移行する。賢者モンスター達を抑えていてくれるらしい。
「ギーーーギッギ!!」(ならばっ)
貴資は聖剣の攻撃で傷つく事にもかまわず、章吾に抱きついてきた。胸部装甲を展開してい
る。
「ハァーーーッハッハ」(まさか)
コォッと魔力が収束する音がする。
貴資は章吾に抱きついた状態で、至近距離から暗黒勇者砲を発射した。
ドウッ!!
章吾は吹き飛ばされ、仰向けに倒れた。貴資自身もかなりのダメージを受けたようだが、章吾よりは少ない。
さらには、章吾は吹き飛ばされた際、聖剣から手を離してしまった。
「ギーーーギッギ!!」(こいつが兄さんの切り札か)
今度は、貴資が地面に落ちた聖剣を手に取り、章吾をめった打ちにした。
「グギーーーッギッギッギ!!」(兄さんの癖にっ)
コーンッ!!
肩の装甲がはじけとんだ。
「ギャーーーッハッハッハッ!!」(僕に勝とうなんてっ)
ドガッ!!バギッ!!
頭部にクリーンヒットして頭蓋が陥没する。
「グゲーーーーッゲッゲッゲッ!!」(生意気だっ)
ビキッ!!バシャッ!!グボッ!!
胸部のアーマーが剥がれ落ちて、勇者砲の砲口たるクリスタルにひびが入る。
そして勇者の肉体が致命的なエラーを吐き出し始める。
死の予感に背筋が凍る。
「ヒーーーーーーッヒッヒ」(うわっ)
突然、視界が暗くなった。
そんな中、章吾が走馬灯の様に思い出したのは、中学生のころの光景だった。
教室の隅で、数人の同級生にぼこぼこに殴られた。
必死になって暴れて逃げようとすると、その時に限って、先生が呼ばれて、俺が悪いことにされた。
学校の帰り道、何度もどぶ川に顔を突っ込まれて、今までに無い、死の恐怖を覚えた。
生きたい。死にたくない。心の底の声が聞こえる。
そして次に思い出したのは、教室の数人の机に白い花が飾られている光景。
いじめっ子達は、事故で死亡という事になった。
「うわああああああああああああああああ」
それは勇者ではない、生の阿久和章吾の悲鳴だった。
結局彼は、クレセントやブランジ、ドン・ドロワスが良くしてくれたから、彼女達が望むように勇者の役割を演じていただけなのだ。
その本性は勇者の高潔さからは程遠い。もっとシンプルで獣の生存本能に近い。自分を害するものを、殺す。
「グギッ」(何ッ)
キュン!!ドォオオオオオ!!
最初に音速を超える衝撃波の甲高い音が聞こえると、その後黄金勇者を中心に巨大な爆発が起こった。
貴資もたまらず吹き飛ばされる。
「グッ、グギャ??」(な、何が起こった?)
第八運輸の第二貨物置場に巨大なクレーターが穿たれていた。
その中心からは黄金の煙がもうもうと立ち上っていた。
「グッグゲッグッグッ」(自爆したのか?いや?ちがう)
ドクンッ!ドクンっ!
ズルッズルッ。
心臓の音と何者かがクレーターの縁を這い登ってくるような音が聞こえる。
そして煙の中に巨大な影が立ち上がった。
「グギャアアアアアアッ」(に、兄さんなのか?)
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