破章 泣いた孤独魔王


日が経つごとに、皆の態度が白白しくなり、

妙な優しさすら生まれてくる。

『ようこそいらっしゃいました。どちらの国から? 勇者は無事消えたのでここは安全な魔族安心の領域ですよ』



来る日も来る日も、まるで初めて自分が此処へきたかのような扱いをされ、

『おれだ!おれのことを憶えてないのか!』と幹部に尋ねても『おいおい、おっさん、最初は良いと思ってたが、しつこすぎやしないか。』と

殴られる始末だ。




それにとどまらず愛していた人までが

自分忘れて他の魔族の男と

体を重ねようとすらしていた。

すかさず止めに入ったが、愛していた人からまさか『最低…二度と関わらないで』なんて言われた日には死にたくもなった。




その日から魔王は魔族の間で人の女を横取りした…だとか、精神的な疾患を持っている変なやつだとか、散々な言われようをした。




しかし、悪いやつだけではない。

下級モンスター代表である。

ジメジメイは魔王を家に招き入れてくれた。




『放っておけなくてさ、みんな酷いよな。勇者がいなくなって、良かったとか言ってるけど結果的に戦わなくなったことで身内で喧嘩騒ぎだ。 君も災難だったな』




ジメジメイなんて名前のモンスターすら魔王はこの時まで知らなかった。下級モンスターのことなど考えたこともなかった。



そんな自分を記憶がない筈なのに助けてくれた心の暖かさに魔王は感激し、初めて泣いた。

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