第117話 背筋が凍るような恐怖
そしてレンブラントが魔術を行使する度に俺の常識やプライドといったものが粉々に砕け散っていくのが分かる。
それと同時に『俺はどう足掻いても、それこそ一生かけてもレンブラントに追いつくことが出来ない』と思えてしまう程の絶望的な差を胸に刻まれて行く。
サーシャの『レンブラントよりも弱いくせに帝国一を名乗らないでっ』という言葉は、言われた当時はそれを言われて腹が立ったし、即座に『レンブラントは高等部最後の試合で俺に負けた負け犬では?』と言い返せたのだが、今サーシャから同じことを言われると何も言い返せないし、肯定してしまうだろう。
どれだけレンブラントの魔術を眺めていただろうか。
俺が、文字通り死ぬ気で抑えていたスタンピードを、レンブラントはまるで子供が初めて魔術を行使する時のように、実に楽しそうに様々な魔術を行使し、それこそ遊んでいるかのよう……、いや、レンブラントは実際にそんでいるのだろう。 この前代未聞の規模であるスタンピードはレンブラントからすれば今まで威力が高すぎて行使できなかった魔術の数々を行使できる格好の遊び場でしかないのであろう。
俺とレンブラントではそれだけ差が開いているという事なのだろう。
もう粉々に砕け散ったプライドでは、腹が立つという事も無く『だろうな……』と素直に受け入れてしまう。
どう足掻いても勝てない高みにいるという事を分からされては腹も立ちようがない。
そして、恐らく国王陛下の懐刀はやはりというかなんというか、レンブラントなのだろう。
というかもうレンブラントでしかあり得ないだろう。
俺の今までは一体なんだったのであろうか……。
最早、何もかもやる気が無くなってしまい、これからどう生きていけば良いのかすら分からなくなって来る。
そんな事を思いながらぼうっとレンブラントを眺めていると、今までにない魔力のうねりと、本能的に背筋が凍るような恐怖を感じるではないか。
「お、おいっ!! そこのレンブラントの弟子とかいう女っ!!」
「レヴィア・ド・ランゲージですっ!! そこの女とかいう名前ではありませんっ!!」
「そんな事などどうでも良いっ!! それよりも今レンブラントが行使しようとしている魔術は何なんだよっ!?」
「え? 知りませんよそんな事。 むしろ知っていると思っているのですか? なんなら今まで行使していたお師匠様の魔術、そのどれも見たことが無いですっ!! なので当然これからお師匠様が行使しようとしている魔術など分かる訳がありませんっ!!」
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