第106話 つい声を荒げてしまう


 恐らくレンブラントは友達同士という事でこの件は有耶無耶にしてしまおうという魂胆なのであろうが、そうはさせてたまるか。


 親しき中にも礼儀ありという言葉もあるように俺はここぞとばかりに『悪いと思っているのならばその分の禊は行ってもらう』とレンブラントへ告げる。


 そしてその禊の内容なのだが、悪いと思っているのならば俺に代わって一日、このスタンピードを抑えて欲しいという事をレンブラントに告げてみる。


 どうせこのドラゴンも何らかの不正かズルかイカ漁夫の利か何なのかは分からないのだが、とにかくレンブラントが実力でテイムしたものでは無いであろう事は一目瞭然であろう。


 そんなレンブラントが俺に代わってスタンピードを抑える事など一時間と持たないであろうから、俺のこの提案を受け入れる筈が無い。


 というよりも受け入れてしまうと間違いなく死んでしまう為、受け入れる事ができないと言った方が正しいだろう。


 さぁ、俺にその情けない姿を早く見せてくれよ……っ。


「分かった。 一日で良いんだな? それでは今からスタンピードを抑えるのを引き受けるのだが、引き受けるだけでいいのか?」

「は? え? 何を言っているんだ? お前っ!?。 強がりならば止めておけっ!! 命がいくつあっても足りないことくらい少し考えれば、お前レベルの魔術師であれば分かるだろうっ!? それに『引き受けるだけでいいのか?』とは何だっ!? それではまるでお前はこのスタンピードを終わらすことが出来ると言っているみたいではないかっ!! ふざけるのも大概にしろっ!!」


 そうだ。


 この俺だって今さっき死を覚悟したばかりなのである。


 恐らくレンブラントの弟子であるという少女が来なければ間違いなく死んでいたであろう。 


 しかもそれだけではなくレンブラントはまるで自分であればこのスタンピードを終わらせることが出来るみたいな内容まで言うではないか。


 そのふざけた内容に流石の俺も怒らずにはいられず、つい声を荒げてしまう。


「いや、なんて説明すればいいのか、そしてどこから説明して良いものか、更にその説明した内容を信じてもらえるとも思えないので詳しく話すつもりは無いのだが、とりあえず俺はこのスタンピードを終わらせることが出来るからさっさと終わらして来るわ。 それで弟子の件は不問な」


 しかしレンブラントの奴は俺に怒鳴られた事など気にも留めずに、ドラゴンがブレスで薙ぎ払ったその奥から土煙を上げてこちらに向かって来る魔獣たちを見据えながらそんな事を言うではないか。

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