第94話 アナタの事を嫌う訳です

「いや、ですから私の側にいたら足手まといですから邪魔だと言っているんです。 私のお師匠様レベルならばいざ知らず、こんな雑魚共すら碌に相手もできないような人を守りながら戦う程の実力は私にはまだありませんからっ。 これでもし私の判断ミスでダグラスさんが死んだりしたらダグラスさんを後ろに下げなかったことを一生後悔しそうだしっ!! それにただでさえ数日間寝ずに戦い続けていたダグラスさんは見ただけで限界である事が分かるので余計に後衛へ下がって欲しいですっ!!」


 たかが学生風情が宮廷魔術師の中でも今現在ランキング一位であるこの俺に向かって足手まといであり邪魔であるという発言にかなり腹が立つものの、彼女に言い返す言葉が見つからない。


 それでもこの少女曰く師匠であるレンブラント以下というのにはどうしても納得できない俺は、その点だけは誤りであると訂正をする。


「分かった。 確かに俺も流石にそろそろ体力の限界であるのは確かである。 その為一度はお前を信じて後衛に戻り、食事と仮眠を取るが、それが終わったら直ぐにまたこの場に戻ってくる。 その時まで何とか耐えてもらいたい。 それと、何度でも言うが、レンブラントが俺よりも強い訳がないからアイツがここに来たところで俺よりも使えないのは間違いないぞ?」

「…………なるほど、サーシャさんがアナタの事を嫌う訳です。 とりあえずレンブラント師匠の事は置いておいて、後衛に下がるというのであれば早くしてください」


 そして少女はそう言うと、土魔術であろう魔術を無詠唱で行使して大きな堀を作り出す。


「これで空を飛べない魔獣たちは食い止める事ができるので幾分かマシになるでしょう。 仮眠と言わずにぐっすりと眠ってください。 そして何度も言いますが、ダグラスさんがここにいたら足手まといなので戻ってこないでください。 邪魔です」

「ぐぬ…………っ」


 流石にこう何度もコケにされては俺もキレそうになるんだが、ここでキレて無駄な体力を使うのよりかは少しでも体力を残して後衛に戻り、少しでも早く体力と魔力、そして気力を回復させた方が良いだろう。


「…………分かった。 だが、お前がどうこう言おうが俺はここに戻って来るからな?」


 俺はプライドを曲げてでも生き延びる確率が高い方を選び、行動に移すことにする。


「お、お師匠様っ!? 無事でしたのっ!?」

「あぁ、片足を無くしてしまったが、それ以外は問題ないな。 回復薬を飲んで少し休めば足以外の傷は全て治るだろう」

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