第69話 見事に打ち砕かれてしまう、

「えぇ、面倒くさい……」

「あ、これ一応王命なんですの。 断ると私のお父さんからどう思われるのか分からないわよっ!!」


 だから面倒くさいんだよっ!! という言葉を寸前で何とか飲み込むことができた俺を何とか褒めてほしいくらいである。


「さすがお師匠様ですっ!! 王命を受けるだなんて、それほど国王様もお師匠様の事を評価しているという事よねっ!! そんな素晴らしいお師匠様の弟子であることが誇らしく思うわねっ!!」


 というかヴィクトリア王女様もレヴィアも語尾に毎回毎回『っ!!』これを付けるのをやめて欲しい。


 年を取るたびに若い女性の高い音が頭に響くようになってきているため猶更である。


「いや、俺みたいなしがない数学教師に国王様が目を付けるはずがないだろう」


 



「という訳で儂はお主の事を期待しておる」


 そう思っていた少し前の俺の楽観的な予想は目の前にいる国王陛下の一言によって見事に打ち砕かれてしまう。


「いやいや、お言葉ですが国王陛下。 俺はあの日たまたまヴィクトリア王女を助ける事が出来たとはいえ本業はしがない数学教師ですので国王陛下が思っているような事はできないかと……」

「謙遜は美徳ではあるが、行き過ぎると逆に失礼にあたるぞ? しかしながら本人からは本当にそう思っているようにも思える為今回は聞かなかった事にしよう」

「は、はぁ……ありがとうございます。 それで、一体誰が俺を薦めたのでしょうか?」


 流石の国王陛下であろうとも、いや、国王陛下であるからこそ娘の言葉を鵜呑みせず俺という人間を判断してここへ呼んでいる筈である。


 という事はオリヴィア王女以外に、オリヴィア王女よりも魔術師として信頼できる第三者からより俺を国王陛下に売った者がいるという事でもあると俺は判断した為、国王陛下に誰が俺を薦めたのかを聞いてみる。


 そもそもこの状況証拠だけですでに『宮廷魔術師、それも上位ランカー』であることは間違いないので、その時点で『あいつか』というある程度のめぼしはついているのだが、一応答え合わせも兼ねて国王陛下へ誰が俺をヴィクトリア王女以外で俺を押していたのか聞いてみる」


「ふむ、そうじゃな。 宮廷魔術師の一人、サーシャ・グラン・ホーエンツォレルンからお主の事を『冗談ではなく、間違いなく王国で一番あの【絶色】のダグラスより強いわ』と言っておったので間違いないじゃろうて」


 そして、その犯人はやはりというかなんというかサーシャであった。 


 しかしながらサーシャの奴、間違いなく俺の事をあることないこと誇張しておあれやこれやと国王陛下に伝えたに違いない。

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