第60話 奴隷様の涙を取ることにした、

「なぁ、ヴィクトリア王女……?」

「何ですのっ!?」

「これって俺に拒否権はあるか?」

「うーん、そうですわね、王国を敵に回す覚悟と、私という一人のか弱い少女を傷つけて泣かせる覚悟があるのであればどうぞっ!!」

「………………わ、分かった。 ヴィクトリア王女様。 俺は君の師匠となろう……っ」

「それでこそ私の王子様ですわねっ!!」


 今ここで断るのは簡単だろうし、王国を敵にしても生き延びる自身もあるし、小娘一人の涙よりも俺は愛しの奴隷様の涙の方が大切である。


 故に、俺は愛しの奴隷様の涙を取ることにした。


 ここで俺がこの話を断ると、ヴィクトリア王女様の言う通り王国を敵に回すという事は無いにしろ、大なり小なり愛しの奴隷様であるリーシャ・ディーニッヒに迷惑をかけてしまうであろう事は容易に想像ができてしまう。


 ヴィクトリア王女様は確かレヴィアと同じ十五歳であった為、手紙には学園期間内という項目が本当であれば長くとも約三年間の我慢でそれが回避できるのであれば俺はそうするしかないだろう。


 それにこの三年間を耐えしのぐことが出来れば間違いなく俺のお給料は跳ね上がるだろうし、そうなればさらに愛しの奴隷様との優雅な暮らし、それこそ前世で夢見た白い一軒家に大型犬、子供は三人に年に二回は海外旅行(この世界ではさすがに金銭があれども気軽に海外旅行できる環境ではないのだが)ができるような生活を現実にできるのである。


 それこそ馬車を購入して馬と馬車のメンテナンスに御者ができる者と、家の家事手伝いをしてくれる使用人を一人雇っても良いかもしれな。


 それもこれも全ては愛しの奴隷様の為であるというのに何故か俺の愛しの奴隷様であるリーリャは俺ジト目でにらみつけて来るではないか。


 解せぬ


 あと、なんでレヴィアまでジト目で俺をにらみつけてくるのだろうか。 これに関しては本当に心当たりがなさ過ぎて意味が分からない。


「モテモテですね、ご主人様。 私の王子様ですって。 若い女の子からちやほやされて鼻の下が伸びてしまわれたのでしょうか? あれほど面倒くさがりなご主人様がヴィクトリア王女様を弟子に取ることを即決なさるとは、ね」

「ち、違うんだリーリャッ! これには深い訳があってだな、全てはリーリャ、お前の為を思っているからこそなんだよっ!!」

「ほ、本当かしら?」

「ほ、本当だっ!! 信じてくれっ!!」

「でしたら今日の夜はそのことを説明しながら愛して頂ければ許しましょう」

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