第58話 イエスかはいで返事を頂戴なっ!!、


 うーん、できる事ならばそのまま宮廷に引きこもっていて欲しかったというのが本音であるし、そもそもこないだあんな事があったのに、今度は護衛をしっかりとつけて馬車移動して来たにしろ外出できるだけの精神力というか心臓が剛毛というか、もう少しこうこ大人しくなってくれれば良かったものを。


 しかしながらヴィクトリア王女がたった一人増えただけでまるで部屋の温度が五度上昇したようなパッションを感じるほどの人物である為、少しで良いから大人しくしろという願いは無理なはなしなのであろう。


「一応私の専属護衛を仕切るジィジから護衛たちを代表して感謝の手紙を書いたので渡してほしいと言われたから持って来ましたわよっ!! 私はちゃんと渡したからねっ!!」


 そしてヴィクトリアは肩にかけた鞄から一通の手紙を取り出すと俺に渡してくる。


『あの一件あと災い転じて福となすと言ったように護衛の目を盗んで逃げだし、一人で外へは出ないという契約もしっかりと魔術で結べましたので本当に、本当にあなた様には感謝しております。 これで日々の胃の痛みから解放されたので感謝してもしきれないほどですっ!!』


 その手紙からは今までの護衛たちの苦労と今回の一件の感謝がストレートに伝わってくる内容であった。


 がんばれ護衛たち。


「それでなんて書いてあったのっ!?」

「え? いや、普通にヴィクトリア王女様を助けていただいてありがとうって書いてあっただけでございます」

「なんだ。 もしかしたら『これも運命だと思いますのでヴィクトリア王女様を娶ってもらえないか』くらい書いているかと思っていたのだけれども、ジィジ気が利かないですわねっ!!」

「いやいや、さすがにそれはどうかと……はははは……っ」


 いやいやいや、なんて恐ろしいことをサラッと言ってのけるんだ、このお転婆娘はっ!?


 そのせいで俺の愛しの奴隷様の右眉がピクピクして変なオーラが滲み出ているし、なぜだか知らないけどレヴィアまで不機嫌そうだし……もホントこれ以上喋らないでそのまま回れ右をして帰って欲しいくらいである。


 というか語尾に『っ!!』を付けるのはレヴィア一人で十分なので流石に二人だと供給過多であると思わざるを得ない。


 というかもう既に俺の体力ゲージと魔力ゲージは半分にまで削られてしまっているので護衛たちの心労を考えると本当に頭が上がらない。


「あ、それともう一通お父様らお手紙を持て来てますの、ちゃんと読んでイエスかはいで返事を頂戴なっ!! 良いですわねっ!?」

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