第53話 私にとってのヒーロー、
そして冷静さを取り戻した賊達は少しずつ少女に詰め寄り、そして一気に攻撃をし始める。
静の動きから急に動の動きへと切り替わった事により緩急をつけられて私は反応できなかったのだが件の少女はしっかりと反応できており、相手の繰り出す体術や魔術を躱し、いなし、相殺しながら防御に徹しているようである。
むしろ相手が三人もいる為防御に徹しないと一人では相手にできないのであろう。
しかしながらそれでもたった一人で三人を相手にするだけでも少女の実力はかなりのものであろう事が窺えてくる。
それでもなんだかあえて時間稼ぎをするために攻撃する事をやめて防御に徹しているような気がするのは気のせいだろうか。
時間稼ぎをしたところで相手にダメージを与えなければジリ貧であり、勝つことはできないということは少女も分かっている気がするのだが、それゆえにだからこそ防御に徹する少女に疑問に感じてしまうのである。
「流石に俺たち三人の攻撃を躱し続けるのはすごいとは思うのだが、これではいつまでたても俺たちを倒せないぞ?」
その事を賊の一人が指摘するのだが、少女はそれを指摘されて焦るどころかニヤリと笑うではないか。
「あぁ、その事については大丈夫。 私にとってのヒーローでもあるお師匠様は必ず助けに来てくれるって信じているし、絶対に来てくれるって信頼しているから私はここでお師匠様が来るまで時間稼ぎをするだけで良いの。 だから焦る必要もないって事ね」
「こ、こいつっ! 仲間を予め呼んでいたのかっ!?」
賊の指摘に少女は答えるのだが、少女曰くもう少しで少女の師匠という人物が助けに来てくれるという事らしい。
それならば少女が防御に徹して時間稼ぎをするのも理解できる。
「全く、だからと言って一人で突っ込んで行って良いとは一言も言ってないだろう? 罰として明日修練場を二十周ランニング追加な」
「遅いっ!! お師匠様っ!! あ痛いっ!?」
そして、無精髭を生やして眠たそうな眼に口にはだばこを加えた男性に、銀髪でメガネをかけた妖艶なダークエルフが何処からともなく現れるではないか。
その男性が少女へ軽く嗜めると拳骨を一つ落とす。
「これに関してはレヴィアをけしかけたアナタも悪いわよ」
「いや、言い訳を言わせてもらおうとただ独り言を言っただけでまさか聞かれているとは思わなかったんだよ。 しかし、本当に王女様が拐われているなんて俺もびっくりだよ」
そしてどうやらこの少女が人りで突撃してしまったのはこの男性の影響らしくダークエルフに軽く嗜められると、面倒臭そうに頭をかきながら言い訳を言うではないか。
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