第30話 日本男児たるもの

 そう言い俺は少しだけシュンとしているレヴィアの頭をなでてやると手始めに『土』と『炎』の二つの属性魔術を操り土を耕す様に堀り進めていく。


 やった事と言えば『土』の魔で鉄だけを取り出し、大量の鍬が付いたような耕耘機の様な物を作り出した後『炎』魔術でその耕耘機様な形の鉄を鉄が溶けない温度迄熱して土を耕す様に掘り進めて行く。


 辺りは土に含まれている水分と、燃えだした草の根による煙で視界が真っ白になる。


 そして闘技場の半分ほどまで土を耕した後『土』魔術で耕耘機の様な物を今度は大きなハンコ状へと変えると、ドスンドスンと地面を押し固めていく。


「まぁ、こんなもんだろ。いきなりこれ程大規模にやれとは言わないからできる範囲で残りの半分を同じようにやってみてくれ。一応これは『土』と『炎』の属性魔術の練習と思ってもらえればいい。後は基礎で叩き込んだ『火』と『土』を思い出しながら自分の物にする様に。これが終われば次のステップへと行こう。さあ、開始っ!」

「はいっ! お師匠様っ!!」


 そして俺は土魔術で鉄製の椅子を作ると何故か未だに俺にくっ付いて帰ろうとしないサーシャと、そして愛しの奴隷様であるリーシャと一緒に座ってレヴィアを見守る。


 さすがのレヴィアであろうとも闘技場半分を俺と同じようにするのは一週間はかかるんじゃないかと思っているので、実質俺はこれにより一週間は弟子育成という仕事から解放される訳である。


 レヴィアはやりたがっていた実技の練習ができ、俺はサボれる、我ながら実に頭のいい考えではなかろうか。


 いくら天才と言えども原子記号だのなんだのと言われてもいきなり理解しろという方が無理がある。


 一応石や貴金属、宝石等はこういう物だという事は教えている為鉄だけを土魔術で作り出す事は出来るだろうがようやっと鉄を取り出せてもその殆どが不純物まみれで鍬一本ほどしか作れないだろう。


 鍬一本ではどうスピードを上げても数日はかかるのは致し方ない事だ。


 これからこういった挫折が多いかもしれないが、これも試練だと思って────


「できましたっ!! お師匠様っ、最終確認お願いしますっ!!」


────いた俺もいました。


 そして俺は何故俺が凡人であるのか、なぜレヴィアが天才であるのかを今一度思い知らされる羽目になった。


 これから、この様な俺の古傷を抉る様な出来事が多くなるかもしれないが、日本男児たるもの絶対に人前で涙は流さないと心に誓う。


 今目から流れていいる液体は単なる汗だ。


「えぇーと、一体どうやったのか俺に教えてくれないか?」

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