第15話 さすがの俺も焦りはじめてしまう






「で、何で今日もお前がいるんだよ。いい加減諦めたらどうなんだ?」

「お前じゃないですっ! レヴィアという立派な名前がありますっ! それにいい加減諦めるのは貴方の方ですっ!」

「良いじゃないですか。これ程懐かれているのだから師匠の一つや二つくらいなって差し上げたらどうですか? ただでさえ彼女との鬼ごっこで帰宅時間が遅くなっているのですから」

「そっ、そうですよねっ!リーシャ先生っ!!」


 今現在放課後。


 部活動に励む生徒達の掛け声という青春を代表するようなBGMが校舎を満たし始めている。


 今日も今日とてもじゃじゃ馬娘ことレヴィアが俺のオアシスである教室へと単身乗りこんで来ていた。


 これではとてもでは無いが学校でリーシャとイチャつく事も出来ないではないか。


 この気持ちはリーシャも同じであるのであろ。


 少々苛立ちを込めた声音で、身から出た錆であろうこの小娘をどうにかしろと歯にに絹着せて言ってくる。


 しかしリーシャは俺とは違い学校よりも家でイチャイチャしたい派であったようだ。


 この、学園の校舎でイチャイチャする背徳感の良さが分からぬとはリーシャも修行が足りぬと言いたい。


 しかし、愛しきリーシャの希望(家でイチャイチャ)とあれば俺の希望(学園の校舎でイチャイチャ)は諦めよう。


 そして俺は少し強引にタバコの火を消す。


「分かった、分かったよ。お前は今日から俺の弟子な」

「ほ、本当?」

「本当も本当」


 本当、厄日だなと口から出そうになるのを寸前で何とか堪える事が出来た俺は偉いと思う。


 後でリーシャに褒めて貰う。


 耳を澄ませば『わ、私があの万色のレンブラントの弟子………やったっ!』と聞こえて来るのだが、気のせいであろう。


「そ、それで弟子になったんだけれども最初の稽古は何をすれば良いのかしらっ!?」


 フンスッ! と鼻息荒く前のめりで聞いてくるその意気込みだけは評価しよう。


「では、そうだなぁ………何もしない」

「………は?」

「いやだから何もしないのが訓練。弟子にするとは言ったが育ててやるとは言ってないしな」


 ここら辺はやはり年の功というかなんというか、決闘の時もそうだったのだが、一度似た様な事で騙されているにも関わらず今回もこんな簡単な事で引かかってしまうと逆に、そのうち本当に詐欺師に騙されてしまうのではないかと不安になってくる。


「って、おいちょっとっ!? 泣くなよっ!!」

「な、泣いてないっ!!」


 そんな事を思っているとレヴィアは声を押し殺して泣き始めるではないか。


 これにはさすがの俺も焦りはじめてしまう。

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