第14話 この女々しい豚めっ!


 そんな俺の男心を知っているのか知らないのか、正しく俺の内心を読んでいる様で実は地味に読めていないリーシャの言葉に思わず苦笑いを浮かべる。


 彼女は未だ俺がリーシャに惚れてしまっているという事に気付けていない様で安心した様な寂しい様な相反する二つの感情を感じてしまう。


 そんな複雑な感情で燻っている時、リーシャが『パンッ』とその豊満な胸の前で手を叩きニッコリと妖艶に微笑む


「と、言う訳で今日は御主人様の性癖に沿ったプレイをいたしますわ。コレでも私は頑張って勉強して来たのですから大船に乗った気分で心を開いていただき、御主人様はプレイに集中して下さいな」


 と、言う訳とは、どう言う訳なのか俺が問い掛ける間もなくリーシャは何処からともなく縄や蝋燭をテーブルの並べて行くと、これまたいつの間にか手にしたバラ鞭で『パシンッ』と乾いた音を鳴らし眼鏡を光らせる。


「あ、あの………リーシャさん? 何か勘違いをなさってませんか?」

「大丈夫でございます御主人様。ちゃんと御主人様行きつけであった娼婦館からしっかりと御主人様の性癖は聞き及んでおります故。黙ってわたくしの言う事を聞きなさいっ! この女々しい豚めっ!!」






「す、すみません御主人様っ!!で、ですがコレだけは勘違いしないで下さいっ!決して私はあの様な性癖の持ち主では御座いませんっ!!」


あれから約二時間ほど経った現在、俺の前でリーシャが『SMではなくソフトSMが好きであり、M側ではなくS側である』という自らの勘違いを指摘され床が割れてしまうのではという程の土下座をして言い訳と謝罪を繰り返す。


決して、『途中からノリノリだった癖に』であるとか『リーシャのおかげで一周回って新しい扉を開きかけてしまっていた』などとは口にしない。


「もう良いよ。リーシャは俺の事を思っての行動だったんだろ?その気持ちは嬉しいからさ、結果はどうあれその部分だけは感謝する。ありがとうな。はいっこの話はコレでお終いっ!」


「うぅ、ご主人様の奴隷にあるまじき醜態。いずれ挽回させて頂きますわっ!」

「まぁ、何について挽回しようとしているのかは深く考えないでおくが、いつものリーシャに戻ったみたいで俺は嬉しいよ」

「では、私は寝室を掃除して来ますわねっ!」


そしてリーシャは元気こそ取り戻したのだが自らの失態については未だに恥ずかしいのかそそくさと寝室の掃除へと向かったので俺はその間に少し遅れた夜食でも作ろうかと立ち上がるのであった。

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