第10幕 小隊
晩餐会は式次第の最後としてイングヴェイ王がレイラを前に〝明日を楽しみにしている〟と声をかけ、レイラがスピアーズ王家の
レイラの待機室の扉の前には既にナカムラはじめ20人ほどの警護が集まっていた。俺は彼らの一人一人と目線を合わせた。仮にこの中に襲撃を手引きする役目の者が混じってはいないかという懸念があった。経験から腹の中に一物ある者は必ず急に目線を合わせられると僅かな動揺の気配を発する。常に命を狙われてきた俺にはその動揺を嗅ぎつける自信があった、というかその慎重さと見破る才能が無ければ俺はとっくにこの世からおさらばしているはずだ。だが俺の見る限り怪しい者は確認できなかった。
扉を開けるとちょうどデイビッド王子がレイラの身を案じ、別れを惜しんでいるところだった。これも
「サラ、準備はいいか。」
サラは大きく手を広げ〝いつでもどうぞ〟とゼスチャーで答えた。そして王子たちに視線を向けるとつぶやいた。
「あれも
その時ブレスレット型の端末が着信を知らせた、アキラからだ。
「どうしたアキラ?」
「今上空からの赤外線カメラに感アリ。ザック、2台の装甲車らしい車両が会場の前に乗り付けて分隊、いや小隊規模の人員が降車して入口の前を固めている!」
「なに!」
俺はそう叫んでサラを見ると既に部屋の入口に向けて走り出していた。俺も彼女を追って部屋を飛び出た。廊下には警護の者たちが待機していた。
「半分は火器持って俺についてこい。半分はここに残って部屋の入り口を固めろ。」
警護の者たちに指示を出しながら建物の正面入り口に向けて走り続けるサラの後を追った。バタバタと警護の者数名も後に続いた。走りながら俺はアキラに呼びかけた。
「アキラ、敵の動きは?建物を囲まれてるのか?」
「いや、正面入り口前に集結してる。裏に回るような動きは見られない。目下降下中だが街中での低空ホバリングは出来ないよ。先に2台の装甲車にミサイルぶち込んどく?」
「待てアキラ、こんな街中でミサイルはない。ただ状況によって援護は必要になる。ある程度の高度を保って上空を旋回しながら警戒、状況は逐一報告を。」
「
アキラの短い返事を確認するとエントランスに急いだ。
広いエントランスに滑り込むと俺は姿勢を低くしながら外を確認するために窓に近づいた。入口の前のスペースに約50人程の武装した人影が整列していた。そのどれもが明らかに鍛え上げた肉体を持つ屈強な軍人だと察せられた。俺は後をついてきた20名ほどの警護を相手の突撃に備えて配置につかせた。その時だった、エントランスにデイビッド王子とレイラは手を携えて入ってきた。俺は慌てて二人にエントランスから出るようにゼスチャーで合図した。ところがデイビッド王子はレイラをその場に待たせると俺にウインクして無造作に入口に近づいた。俺の頭の中では一瞬〝警護対象はレイラ〟と警告が発せられたが、考えるより先に体が動いた。俺は腰のホルスターからS&Wを引っこ抜くと入口の前に立ったデイビット王子の盾になりながら外に向けて銃を構えた。ただ俺は引き金を引くことはしなかった。何故ならそこには50名ほどの部下を従えて美しい敬礼姿勢を取った指揮官が笑顔でこちらを見ていたからだった。
「第一
デイビッド王子が俺を押しのけると、今高らかに名乗った指揮官に抱きついた。
「ローレンス、久しぶりだな。元気だったか?」
「兄さん、おめでとう。僕は本当に嬉しいよ。」
その言葉とどこか面影が似ている二人を見て俺は合点がいった。驚いている俺に気付いたのかデイビット王子が指揮官の紹介を始めた。
「驚かせてすまない。これは私の弟のローレンスだ。」
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