185超えの高身長DKと高すぎるイケメンDKの会話

いちのさつき

背が高いからと言って、それが良いとも限らなかったりする

 身長があれば。背が高ければ。そう思う男子高校生、大人達がいるだろう。理由として、女子からモテたいからだろうか。ただ実際は面倒な時だってある。身長186cmの男子高校2年生、磯ヶ谷尊はたまに己の身長を恨んでいる。彼と同じクラスで更に身長が高いバスケ部所属の枝川は不便さを感じる時もある。そんなわけで、ちょっとした光景……ではなかった。彼らの会話をご覧あれ。


「たけっち、おっはー。おい。まだ登校したばっかだぞ」


 涼しくなってきた朝の8時15分。ボチボチ運動部系などが教室に移動する時間帯である。そのはずだが、磯ヶ谷は来て早々、うつ伏せになっていた。クラスメイトの地毛が茶髪のパーマ系だと言う斎藤がちょんちょんと突っついている。


「うるっせー。バスケ部から追いかけられてクタクタなんだぞ」

「あーそれはご愁傷様」


 軽音部に所属する磯ヶ谷は普段早く登校している。何故か。身長が高い方で、なおかつスポーツの素養があるため、男子バスケ部に追われることがあるためだ。


「なんでそうなったわけ」

「ちょっと遅延があってズレた」

「そりゃどんまい」


 しかし電車通学でたまに遅延が起きる。早めに出発しているため、遅刻自体は免れているが、バスケ部に追われる結末である。


「なるほどな。どおりで」


 磯ヶ谷よりさらに高い2mジャストの枝川がやって来た。爽やかなショートヘアのイケメン高校生である。彼は自分の椅子を持って来て、足を組んで座った。


「枝川か」


 声で不機嫌であることが感じ取った枝川はあることに察した。


「すげえ不機嫌だな。この感じはあれか。橋本さんに追われたんだな」

「そうだよ。止めろよ。クソが」


 徐々に口が悪くなっている磯ヶ谷。それでも枝川は怯まない。むしろ面白がっている節がある。


「おー口が悪くなってる。ま。それぐらいの身長なら高校卒業と同時にオサラバだしいいじゃねえか」

「よかねえよ。今すぐに静かな朝を獲得してえんだよ。で。なんでそう思ったんだよ」


 磯ヶ谷はのそっと顔をあげる。目だけ動かし、枝川を見ている。斎藤も似たようなことをする。


「大きすぎるのも問題なんだよ。まず車の中、すっげえ狭く感じる」


 2人は大きい枝川が座る光景を想像する。


「それと建物も狭いし、入る時屈まないときっついからさ。腰が地味に痛くなるんだよな」


 電車に乗る様子を思い出す2人。


「俺は顔がいいけどさ」


 2人は反射的にあることを発する。


「〇ね」

「酷くね!? デカすぎると怖がられることもあるんだよ! イケメンだからって、効果がない時だって普通にあるんだよ!」


 疑わしいと思ったのか、ジト目で見る2人である。


「うわーマジで信じてない奴じゃんか。そんで最後。服が見つからないんだよな」


 斎藤がひとこと。


「テキトーでもどうとでもなるだろ。顔がイケてりゃ、ダサい服でも問題なし」

「そうじゃない。そうじゃないんだよ。服のサイズが」


 そっちかと2人は思った。そして納得した。確かに2mとなると、似合う似合わない以前の問題だ。サイズが合わなかったら、元も子もない。


「お前たちは色々なとこで買えるけど、俺の場合はめっちゃ限られてくるんだよ!」


 悲鳴をあげるように枝川は言った。イケメンでも、あまりにも身長が高いと、逆にデメリットになりかねない。それを学んだ2人はそっと枝川の肩に手を置いた。


「うん。どんまい」


 と。

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