第18話 人を簡単に信じるのは危ない
放課後になり倉野愛は先生に挨拶をした。
『先生、私先生となら母との関係を変えられるかもしれない。先生、大好き』
倉野愛の大好きには先生が好きと言うより好きと言えば私から離れることはないだろうという恋人にも向けられる甘い束縛に近いものもあったのかもしれない。
花岡先生は倉野愛から向けられる愛情を受け止めかわす様に言った。
『ありがとう。倉野さん。でもその大好きはいつかあなたが好きになった相手にその言葉を言ってあげて。私に求めるのは愛情より信頼の方が嬉しいから』
倉野愛は少し残念そうに言った。
『私は先生が初めて嘘も偽りもなく信じられた人なんだよ。だから、私の言葉受け取ってください』
花岡先生は首を振り言った。
『ダメよ。確かにあなたから見たら嘘も偽りもないかも知れない。でも、私はそんな人間じゃないわ。人はもっと残酷に生きてるの。あなたはまだお母さんという存在が残酷だとしか知らないだけで、世の中にはたくさん人を騙し、人を追い詰める人がいる。人を簡単に信じることはお勧めしないわ。もっと、私とあなたが仲良くなった時にもしあなたが私を見て、信じていい人だって気づけたらその時、あなたの言葉を受け入れるわ』
倉野愛は分かりましたと言い、保健室を出て行った。
放課後の保健室はとても静かになった。
人がいない花岡先生だけの保健室は初めてだ。
花岡先生は少しだけ倉野愛さんに冷たいことを言ってしまったかもしれないと後悔したのであった。
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