第15話 家族からの愛に矛盾を感じる
倉野愛は保健室で花岡先生に話すなり、携帯をいじり始めた。
花岡先生は倉野さんに声を掛けた。
『もしかしてお母さんから逃げて来たのかな?そうだとしたら何時間でもいて良いからね』
倉野さんは携帯の音ゲーをしながら、淡々と話し始めた。
『先生はお母さんに愛されたことありますか?私は正直愛されているかと聞かれたら、悩むかも。だいたい愛してるならなんでもっと私を大事にしてくれないの?愛っていう名前さえ、矛盾な気がします』
『先生は人並みに愛されてるって感じるかな。倉野さんはお母さんから大事にされてないと思うのはなんでかな?』
倉野さんはミスしたと携帯をソファに投げ出した。
倉野さんは考えついて言った。
『先生は良いなぁ。私も先生みたいなお母さんが欲しかった。私のお母さんは愛するって感情がないみたい。何かあるたびに学校に来て、抗議して掻き回して本当最悪すぎる。私が幼い時は他人の子と比較してばっかりだった。あの子はなんでも出来るのに、私はあの子より劣っているって、今思い出しても悲しいくらいだよね。傷つけられた言葉はいっぱいあったのに、今は思い出したくなくて全部忘れちゃった。だって、全部自分にとって苦しくて悲しいことばかりだから』
倉野さんは話しながら泣いていた。
そんな彼女をそっと花岡先生は抱きしめようとした。
すると、彼女はそれを拒否して言った。
『別にそんなの要らないから。ただ話したかっただけだから。それに人が怖いから近づかないで下さい』
花岡先生は謝った。
『ごめんなさい。あなたの事を理解しようとしただけなの。何もするつもりはないから、怖がらないで』
『ごめん、先生。触られるのは無理だからエアタッチしよう』
『エアタッチ?』
『そう、エアタッチ。手と手を1センチくらい開けてタッチするの。そしたら、手が触れないでしょ』
そう言って、倉野さんは花岡先生とエアタッチをした。
倉野愛は先生を見て言った。
『先生ってSNSとかやってる?例えばLINE、インスタ、Twitterどれかやってる?』
『やってても教えません』
『だよね。私は全部やってる。特に頻繁に浮上してるのは、Twitterかな。呟くのは自由だし、誰かのツイートを見るのも自由だしね。先生は私のこと理解したいんでしょ。じゃあ、倉野愛の取扱説明書を教えてあげる。それは、人なんて信じてないってこと。あとは上手く生きて行く為には、ただ笑ってることが重要ってこと』
『それって取扱説明書というより今もしかして倉野さんの現状がそういう感じで、誰かにSOSを送りたいってことなのかな』
倉野さんは黙って何も言わなかった。
彼女はソファに置いてあった携帯を拾い上げて、また携帯をいじくり出したと思うと、声を出さず携帯を花岡先生に差し出した。
そこには、こう書いてあった。
『先生、やるじゃん。断片的な私の今の辛さを汲み取るなんて、先生凄すぎ』
彼女が今辛いなら、助けるべきだけどどうしたら彼女を救えるのだろうと花岡先生は考えていた。
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