第7話 学校で幻のアイドルに会った
ある昼休みの日に、いつものように花岡先生と八木くんは話をしていた。
八木くんは最近の話をし出した。
『先生、高野綾さんって子知ってますか?その子がこの国清高校の生徒でその子、めちゃくちゃ可愛くて最近芸能人になったそうですよ』
先生はへーと言った。
八木くんは続けて言った。
『それで、その子が最近爆発的な人気の『LOVE Rose(ラブローズ)』に電撃加入したそうですよ。もう周りは彼女の話で持ちきりなんですよ』
花岡先生は八木くんを見て言った。
『そんな持ちきりの話を保健室で話してくれてありがとう。でも、周りがそんなに彼女のことをまじまじ見ているならある種問題じゃないかな。だって、彼女は芸能人ってだけでもすごいのに、芸能人で高校生やってますってかなりレアな存在だって思われて、もし運動が苦手で勉強がダメだったら、彼女のことを噂話のように話して、教室にいづらくなるんじゃないかな。この学校に、芸能人だけがいるクラスがあるわけでもないんだし。その子に会ったことないけど、心配だな』
八木くんは饒舌だったのが、謝り言った。
『すみません、先生。確かにその子のことを考えると胸が苦しくなりますよね。その子にはまだ会ったことありませんが、僕も心配になって来ました』
先生はいいよ、いいよ。と手を振って八木くんに笑いかけた。
高野綾さん、先生は考えていた。
高野、高野綾。
確か入学式の日は仕事の関係で欠席していた子だと気づいた。
昼休みが終わり、パソコンで高野綾のことを調べるとGoogleで高野綾はすぐ出てきた。
アイドルには疎いが、調べてみるとTikTokで人気のアイドルグループだった。
『LOVE Rose』初めて聞く名前だった。
そのセンターで踊っていたのがAYA。
高野綾だった。
彼女の歌とダンスは上手いとは言えなかったが、愛嬌があってとても素敵なものだった。
いつか、会ってみたい。そう感じさせてくれるダンスと歌に愛嬌だった。
そんな彼女がこの国清高校に入学したとなれば、確かに周りはみんな注目するだろうなと思った。
でも、この数週間、授業や休み時間に彼女を見たことは無かった。
一体彼女は本当にこの学校にいるのだろうかと疑問に思った。
その疑問点が解決したのは数日後だった。
放課後に図書室に村上春樹の本を返しに行った時に、本を読んでいる女の子を発見したのだった。
彼女は髪の毛を結びポニーテール状態だった。
まつ毛まで全てが綺麗だった。
思いがけず花岡先生は彼女に声をかけた。
彼女はイヤホンを置き、こちらをまじまじと見つめた。
花岡先生はドキッとした。
あのAYAだったからだった。
先生が何か言う前にAYAが言った。
『あの、先生どうしました?』
先生は答える。
『あなたが高野綾さん。何読んでるのか気になって声をかけたのと、学校ちゃんと来てる?』
高野綾は言った。
『これは、『カキじいさんとしげぼう』という本です。学校は仕事の関係であんまり行けてないです。だから、学校のテストとかもあんまり点数良くないです。困ってます』
花岡先生は言った。
『じゃあ今度保健室来てみない。仕事が終わってからでも、放課後でもなんでもいいからさ。一緒に解決策探そう』
高野綾は、はい。と頷き、イヤホンをまた耳につけ本を読み始めた。
花岡先生はミーハーになっていた。
AYAの沼にハマりきっていた。
心の中でアイドルではなくて生徒として接しようと決めた瞬間だった。
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