第5話 願い事を叶えたい
『先生、僕このまま友達出来ないまま、保健室登校してたら、勉強とかできないだめな大人になっちゃいますか?それだったら、頑張って教室行った方がマシですか?』
花岡先生は保健室に入るように促して、保健室にあるベッドに座らせて言った。
『もし、このまま頑張って教室に入るって言うなら止めないよ。でも、教室が怖いというならここにいても構わないよ。勉強なら大丈夫。担任の先生に確認を取ったら、プリントとか板書したノートとかはコピーして保健室に届けてくれるって言ってたから。それに、ダメな大人なんかにならないよ。八木遊平くんは立派な人だから』
八木くんは先生の言葉を聞いて少しだけホッとした。
花岡先生はパソコンを動かしながら言った。
『それに、誰がダメな大人になるとか言ったの?』
八木くんはベッドから先生に向かって言った。
『学校の人です。厳密に言うと、僕のクラスの奴です。僕が入学式まもなく保健室登校することに対して、心が甘いやつだって言ってました。僕の虹色の髪もダサい髪だって言ってました。僕は正直悔しかったです』
花岡先生はパソコンから八木くんの目を見て言った。
『八木くんの髪色、私は好きだよ。私も虹色の髪型にしてみたいなって思うしね。それに、あなたのクラスに行って八木くんに悪口言った奴は誰だって吊し上げにしたいくらい。でも、そんなことしたらダメだよね。穏便に済ませるためには、まずは相手より自分が上だと見せる必要があると思う。そのためには、保健室で一緒に強くなろう。仲間が多い方が敵に勝てる確率が高くなるからね。ごめんね、実は最近ゲームのやりすぎでゲーム脳になってます』
八木くんはクスッと笑って言った。
『先生がいれば僕、強くなれる気がします。仲間ってことはこれから先、保健室の空間で仲間が増えるってことですね。早く仲間が欲しいです』
パソコンを操りながら花岡先生は八木くんの話を聞いた。
入学式が終わり、周りはみんな授業が始まるなか、保健室にいる八木くん自身が信じられなかった。
本当だったら、友達作って授業聞いて、休み時間にバカなことしてそれで放課後は部活に勤しむ。
そんな時間を過ごすことのできない自分に腹を立てていた部分もあったけど、今はすごく嬉しかった。
同い年の友達はまだ出来てないけど、先生がいるだけで心強かった。
僕は先生がパソコンをしている間に勉強をしていた。
勉強はすごい好きだ。
勉強には必ず答えがあるし、間違いもある。でも、友達との会話には正解がない。何かしてしまえば僕は友達を失ってしまう。中学の時は友達は教科書だけだった。周りからはガリと呼ばれた。高校に入学すると今度はあだ名さえつくことのない幽霊になってしまった気がする。でも、いつかは保健室登校から普通に教室に入って誰からも無視されずおはようって返してくれる本当の自分を見てほしい。
それが八木遊平くんの1番の願いだった。
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