第3話 友達の作り方ってどうやるの?
ぼーっと窓を見ていたら、僕の名前が呼ばれた。
はい。と返事をして、黒板の前で自己紹介をした。
『国松中学から来ました。八木遊平です。よろしくお願いします』
そんな彼の自己紹介に周りはざわついた。
彼の通っていた国松中学は中高一貫の学校で周りが入りたくなる学校のひとつだった。
そんな学校から公立の国清高校に進学するなんてどうしてなんだろうと思うぐらいだった。
八木遊平くんは周りの自分を色眼鏡で見る姿に反吐が出るほど嫌だったが、そんな目は慣れていたから席に着くと黙って寝たふりをしようとした。
彼が机で寝ようとした時、彼の前の席の男子が声をかけた。
『八木くんさ、なんでこの高校に来たの?なんか理由でもあるの?』
八木くんに声をかける彼の目は理由を聞いて、噂を広めそうな顔をしていた。
僕は彼の噂にならないようにどうでもいい理由を言った。
『ここに来たのは髪色が自由だったからだよ。それ以外に特に理由は無いかな』
声をかけてきた彼は残念そうにそうなんだと言い、それ以降八木くんに声をかけて来なかった。
八木くんは授業が始まるまで、退屈だったから机を枕代わりにして寝ていた。
八木くんはクラスで友達を作ることを諦めた。
誰もが僕を僕として見てはくれてはいなさそうだったからだ。
居場所が教室には無さそうだったから、昼休みは教室で1人ご飯を食べてから図書室に向かった。
図書室で本を読むのは好きだし、学校を忘れさせてくれる。
でも、僕は本当は友達が欲しかった。
この学校に入った本当の理由は、勉強ばかりな国松中学から国松高校に進みたくなかったからだった。そんな時に学校紹介で国清高校を見て、この学校を受験した。高校デビューは失敗に終わったかもしれないけど、勉強でしか知り合えない友達よりも遊びで知り合える友達が欲しかった。
八木遊平くんは十二国記を読み進めているうちに泣いてしまった。
そんな彼の姿に声をかけた先生がいた。
『大丈夫?新入生代表だった八木遊平くんだよね。覚えてる?坂道でガムの取り方教えてくれたよね』
八木くんは先生の顔を見て言った。
『あっ!花岡先生。こんにちは、どうしてここに?』
花岡先生は言った。
『昼休みの暇つぶしといえば、図書室でしょ。図書室は第二の保健室ってくらい落ち着くしね。それに、生徒がどんなもの読んでるかとか気になるからね。でも、八木くんが読んでる本も難しそう』
八木くんは涙を拭き言った。
『これは、全然難しくないですよ。先生は普段どんな本読んでるんですか?』
花岡先生は考えて言った。
『前はずっと村上春樹さんの小説にハマって、そればっかり読んでたな。最近は読んで無いから、読みたいぐらい。八木くん、そろそろチャイム鳴るけど、教室行かなくていいの?』
八木くんは急に顔が青ざめてポツリと言った。
『僕は友達が欲しくて、変なことしちゃいました。髪も虹色に染めちゃって。本当、バカですよね。入学式でもう教室入るのが嫌になっちゃいました。できることなら教室に入りたくないです。僕はどうしたらいいんでしょうか』
花岡先生はうーんと考えて言った。
『じゃあ、保健室に来ちゃえば。まずいまずい、生徒だからえっと保健室で過ごしたらいいんじゃないかな。ひとまず、今日は頑張らず教室で乗り切ってみて。それから担任の先生と相談してその後は保健室で過ごそう。それで、良いかな?』
八木くんは急に元気になり言った。
『ありがとうございます。このご恩は一生忘れません』
そう言って、足早に八木くんは図書室を出て行った。
その姿を見て、生徒のことを考えて動くって難しいと感じた。
そう思えば思うほど花岡先生は高校生の頃の保健室の先生だった田島先生を思い出していた。
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