第14話

「なあ、お前まだランク低いだろ? 装備が新人どころかそれ以下に見えるぞ。」


「冒険者登録したばかりだからな、Gランクだ。」


「依頼受ける前には装備揃えるんだぞ。」


 基本的にガルフはいいヤツなんだろう。


 ガルフと5mほど離れて立つ。俺は木剣を持っているが、ガルフは素手だ。多分、拳闘士なんだろう。


「先手は譲ってやるよ、かかってきな。」


 多分、俺のほうが弱いことは感じとっていた。


「それはありがとよ!」


 素早く近づいて袈裟斬りを繰り出す。対するガルフは右手で木剣を受け流しながら、左拳でボディを狙ってきた。

 ボディを殴られて5mほどふっ飛ばされる。幸い金剛気でカバーしつつ、衝撃を自らふっ飛ばされることでダメージはほとんどなかった。


 ガルフはそのまま近づいてきて、拳、肘、膝、足、いろんな部位を利用して攻撃してきた。対するこちらは木剣1本。攻撃を弾こうが、受け流そうがどうしても防御の隙間から攻撃を受けてしまう。何度も攻撃を喰らいながら、ぶっ飛ばされながら対処しようとするが間に合わない。【行動予測】も可能性の数が多すぎて対応しきれない。


 【解析領域】を使ったラーニングでガルフの体術に対する理解も深まりつつあるし、何より体術は手数の多さが魅力だ。俺のメイン武器は体術にすべきかもしれない。そう直感した。


 そして、木剣を投げ捨てて素手となりガルフと再び、ぶつかり合う。


 5分ほど経過して少しずつ【行動予測】も収束し、ラーニングも進んできてガルフの攻撃に対応できるようになってきた。攻撃を受け止め、受け流し、同じ攻撃で相殺する。


 ガルフが攻撃を止めた。


「かー、埒があかんな。こりゃ本気出すしかないか。」


 そういうとガルフは闘気を纏い、攻撃にも闘気を利用するようになってきた。攻撃の瞬間に闘気を打ち込んでくる。中国拳法で言うところの発勁みたいなものだろうか。


 きちんと攻撃をガードしても体の芯にダメージを食らってしまう。防御を貫通してくる感じだ。正しく対処するには攻撃の闘気を上回る闘気で相殺するしかない。


 初めて見る攻撃ではあったが、【解析領域】と【高度思考】のおかげで発勁に込められた闘気量は見えている。あとは攻撃に合わせて素早く闘気を込めて防御するだけだ。試行錯誤しつつ、これにも除々に対応していく。


 ガルフのほうも調子が上がってきたのか、攻撃の回転数が上がってきた。そして二人のやり取りは加熱していく。


 防御面が完璧に対応できるようになってきたので、反撃も少しずつ出来るようになってきた。ラーニングでガルフの体術はマスターしつつある。どちらが攻撃の流れを掴むか、そういうやり取りになってきていた。


 俺の攻撃も少しずつ当たるようになってきたところでガルフは攻撃を止めてしまった。


「止め止め。やってらんないわ。お前のようなGランクがいるか。俺の権限でDランクにしてやる。それでちょっとは大人しくしろ。まったく、俺は元Aランクだぞ。」


 ガルフはそのまま立ち去ってしまった。


 ノッてきたのに残念、と思いつつ俺も訓練場をあとにしたのだった。


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 冒険者ギルドの受付に戻ってきた。


「本日はどのようなご用件でしょうか。」


「活動拠点をここに移すのと、ランクの更新だな。」


 受付嬢にギルドカードを渡す。


「少々お待ち下さい。」


 受付嬢がギルドカードを専用の機械にかざす。


「シルク様、Gランクですね。ギルドマスターからランク更新の件は聞いております。Dランクへの更新を行います。」


 受付嬢が機械を操作してランクアップをして、ギルドカードを返却してくれた。


「どうぞ、ランクの更新が完了しました。」


 あとは、これからの生活のために金が必要だな。


「このあたりのダンジョンの情報を教えてくれ。」


「そうですね、まずは一番活気があるのは『アバルジェンダンジョン』ですね。スタンダードなダンジョンで攻略最前線は68階です。ここから北西に馬車で2日くらいの場所にあって、最寄りの休憩施設としてはアバルジェン村です。他にあるのは小規模なダンジョンなのでうまみは少ないです。」


「アバルジェンダンジョンの詳しい情報の資料はないか?」


「こちらが簡単な資料になります。」


 50ページほどの小冊子を渡された。大事なところだけを読んだフリをして小冊子を返す。【解析領域】で解析させておく。あとで読むとしよう。


「なるほど、助かった。ではまたな。」


 とりあえず、ギルドでの用事も済んだので、しばらく使うであろう宿屋を探すことにした。


 -------------


宿屋を探して王都を歩いていると後ろに尾行されていることが【解析領域】によってわかった。人数は5人だ。


【解析領域】で人のいない裏路地を探して歩いて行く。ちょうどいい場所を見つけて背後を振り返る。


そこにいたのはギルドで絡んできたCランク冒険者のゴンドだった。あと取り巻きが4人。


「さっきはよくもやってくーーーーー」


パチン。と指を鳴らすと同時に糸で首を切断してやった。


「雑魚が。わざわざ絡んでくるんじゃねぇよ。」


首から大量の血を流しつつ、体が倒れていく。


シルクの目的である、母親を探し出して救出する。その目的の邪魔となるものは正面から打ち破ると決めているシルクだった。そのためなら犯罪や殺人もいとわないほどに狂っていた。

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