王都

第13話

 クォリア王国の王都は20万人規模の都市で、東西南北にそれぞれ大門が設置されている。その周辺を高い壁と深い堀で囲っており、鉄壁の防御を思わせる外観をしている。

 中央に王城があり、その周囲に貴族街と行政機関や各ギルドの本部がある。王都は広いため、その外側の東西南北の各区画にそれぞれ行政機関や各ギルドの支部や商店街、住宅地などがある。例えば王都冒険者ギルド北区支部という感じだ。


 王都に着いた俺は西の大門の前に並んで入場を待っている。大門のところでは、人(旅人や冒険者)用の入り口、商人用の入り口、貴族用の入り口と3つ、それぞれ入り口があった。人の入り口は10数分で順番が回ってきた。犯罪者確認用の水晶に俺、カグヤ、リンがそれぞれ触れ、青くなったことを確認できたため、ようやく王都に入ることができたのだった。


 まずは郵便ギルドによってリンダさんへの手紙を渡すことを目的にした。西区にある郵便ギルドへ行き、受付の人に郵便を渡す。そのときに「西区の冒険者ギルドへ伝言をお願いします」と書いたメモも一緒にリンダさんに届けてもらえるように手配した。


 次に西区の冒険者ギルドへ向かった。目的は活動場所を王都に移すことの宣言とリンダさんからの伝言を受け取るための言付けのためだ。


 冒険者ギルドは2階建ての大きな建物で訓練場が併設されている。1階には待合場所と受付があり、2階はギルド職員専用スペースやギルド長の部屋などがある。ギルド会館の裏手には討伐依頼証明や魔物の部位を買い取ってくれる場所がある。


 さっそく、冒険者ギルドに入って短めの列に並ぶ。


 しばらくして、大声を出しながら冒険者ギルドに入ってくるヤツがいた。


「おう、Cランクのゴンド様のお帰りだ。子供は邪魔だ。列を変わりやがれ!!」


 そういって、俺のところまで来て肩を掴もうとしてきた。【解析領域】によって全ての動きを把握していた俺は、ゴンドの腕を捻りつつ背後へ周りこみ、足を払い、頭を地面へ叩きつけるように押し倒したうえで、肩を外し、頭を踏みつけてやった。


「ぎゃああああ」


 とゴンドの叫び声がギルド中に響いた。


「お前、このゴンド様になんてことしやがる!!」


「・・・・・・」


 そう言われても、俺としては正当防衛しただけなんだが。。。


 状況を見かねたギルド職員が慌てて駆け寄ってくる。


「あなたたち、何をしているんですか。すぐに離れなさい。」


 うーん、この感じでは俺のほうが悪者にされそうだな、と思いつつゴンドから手を離してやった。


「俺は絡まれただけなんだが。」


 一応言い訳をしておく。


 ギルドの非常勤の回復術士が到着して、ゴンドにヒールをかけている。


「クソガキ、よくもやってくれたな!! ボコボコにしてやるから訓練場に来い!!」


 ゴンドが怒っている。Cランクの冒険者っていうものがどれくらいの強さなのか気になったので、誘いに乗ってやることにした。【解析領域】でギフトやスキル、魔法などをたくさんラーニングしたいので模擬戦などは大歓迎だった。


「いいぜ、やろうか。」


 -------------


 場所をギルドの訓練場に移して、ゴンドと二人向かい合う。お互いに木剣を持って5mほど離れる。


 騒ぎを聞きつけた冒険者が大勢、訓練場に集まっていた。「生意気なガキをぶっころせー!!」など好きなことを叫んでいる。


 審判もいない模擬戦なので、開始の合図は自分たちで出す。


「先手を譲る、さあ来いよ。」


 俺は余裕ぶった態度で呟く。


「なめやがって!!」


 ゴルドが素早い動きで迫ってきて上段からの袈裟斬りを放ってくる。


 俺は左手で剣を掴むと、右手の剣で相手の足を払う。そしてゴンドがコケる。さっと5mほどの距離に戻る。


 それから何度もゴンドの攻撃を左手で掴む、払うなど対処して、足を払う。そしてゴンドがコケるを繰り返した。


 外野から「何を無様さらしてんだ!! 本気出せ!!」と野次が飛ぶ。


 切れたゴンドは腰にぶら下げていた鉄剣を取り出し、向かってきた。


「ぶっ殺してやる!!」


 別に獲物が変わったくらいで強さなんて変わりないんだから、さっきまでの焼き直しだ。

 ゴンドの攻撃を左手で対処し、剣で足を払う。


 さすがにネタが切れたのか、武技を使ってくるようだ。

 武技とは闘気を使った攻撃用のスキルで、闘気を飛ばしたり、斬撃の速度を上げたり、複数回の攻撃を繰り出したりできる技の総称だ。


「豪雷閃」


 すばやい左薙を繰り出してきた。とはいえ、あまり驚異には感じない。左手で掴んで、剣で足を払う。


「双撃斬」


 袈裟斬り、逆袈裟斬りをほぼ同時に放ってきた。まず袈裟斬りを掴んですぐに離す、次の逆袈裟斬りを挟んで、剣で足を払う。


 すでにゴンドは何度も転ばされてボロボロだ。誰が見ても一方的にやられていることがわかるだろう。


 もうすでにゴンドの引き出しは全部見たかなと思ったので、素早く近づいて左で掌底を胸に放ってやった。

 10mはぶっ飛んでいって地面に無様な姿で転がった。


 そこに乱入者が現れる。


「おいおい、外者だろお前。好き勝手にやられちゃ困るんだよな。ちょっと痛い目みてもらう必要があるな。俺はここのギルドマスターのガルフだ。元Aランクだからな。楽には倒せんぞ。」


 西区の冒険者ギルドのギルドマスターが現れた。

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