第12話

 冒険者ギルドに併設されている訓練場に、カリスさんと向かった。


 訓練場の中央で相対するようにお互い、構える。


 カリスさんは斥候で、スピードを生かした牽制が得意なタイプだ。武器は二刀流のナイフ。

 投げナイフや投擲武器も駆使した変則的な戦い方がメインらしい。


 訓練ということで、刃の潰したナイフをそれぞれ装備した。


 そして、俺のほうもカリスさんと同じ武器を選択した。これは舐めプをしているわけではなく、相手の一番得意な戦法をすべてラーニングしたいという個人的な願望だ。


 いつも展開している解析領域を30mほどに縮小し、分解能を上げておく。一挙一投足を見逃さない。


「さあ、いつでもこい。」


「行きます。」


 冷静で静的なタイプだと感じる。最小限で攻撃をいなし、最低限で効率的なカウンターで戦うんだろう。


 解析領域で呼吸、筋肉の動き、魔力を動きを観察する。それは未来予知の領域に昇華していき、そして【行動予測】になる。

 相手のこれからの行動の無数の可能性、そしてそれに対応する最善な対応が見えていく。


 最初はぎこちなかった動きが洗練されていき、模擬戦を開始して5分ほどで実力が拮抗してくる。

 慣れてきたので、除々に【身体強化】を弱めていく。

 ステータスで劣る分、剛ではなく柔で、純粋なテクニックだけで対応していく。

 そして解析領域で自分と相手の行動のすべてを経験値として貯めていき、そこからさらに発展させていく。


 効率的に攻撃を受け流し、最小の距離と部分強化で攻撃を繰り出していく。

 1時間ほどの模擬戦で完全にカリスさんのテクニックを物に出来たと思う。


 カリスさんは常に全力で対応していたため、相当に疲れているようだ。

 寝っ転がって肩を息をしている状態だ。


 それに比べて俺の方は十分に余力を残していた。


「カリスさん、ありがとうございました。勉強になりました。」


「はぁはぁ、どんな成長速度だよ。途中からは手ぬいてただろ。」


「まぁギフトの能力の一部です。あとは秘密です。」


「こんな場所ではあれだから、ギルドのホールに戻ろうぜ。」


 冒険者ギルドのホールに戻ってきて、適当なテーブルに座る。


「シルク、お前、王都に行くつもりなのか?」


「はい、王都には大きめのダンジョンも近いですし、王立図書館にも興味がありまして。」


「だったら、俺の元パーティーメンバーのリンダってやつが王宮魔術師をやっているんで、紹介してやるよ。もしかして何か得られるものがあるかもしれないしな。手紙を書いておくから王都の郵便ギルドに届けてくれ。冒険者ギルドに顔出すように伝えておくさ。」


「それは助かります。」


 そういって手紙を受け取った。


 -------------


 それから、テイマーギルドに向かった。

 ちょうど空いている受付があったので、そこに並ぶ。


「従魔の登録をさせてくれ。」


「では、こちらの書類に従魔の種族を書いてください。」


 従魔:スライム、アラクネ


「では、この水晶玉に従魔を触れさせてください。」


「リン、カグヤ、この水晶玉に触ってくれ。」


『わかったー』


「わかりました。」


 水晶玉は触った瞬間、淡い光を放った。


「はい、大丈夫です。少々お待ち下さい。従魔用のタグを作成してきます。」


 5分ほど待っていると受付の人が戻ってきた。


「こちらのタグを従魔の見えるところに装備させておいてくださいね。あと、従魔が問題を起こした場合は、テイマーが罰を受けることになるので気をつけてください。」


「リンは、溶かさないようにタグを見える状態にして飲み込んでおいてくれ。カグヤは首から下げておいてくれ。」


 従魔登録が無事に済んだ頃にはすでに夕方になっていた。

 カリスさんと適当な宿屋に一泊した。

 カリスさんは朝食を食べたら冒険者ギルドに行って、フェイ村へ行く一団と合流するらしい。


 俺は、王都へ向かうため街の門へ向かった。

 門のところで冒険者ギルドカードを見せて外に出る。

 しばらく門から離れたところまで走って誰もいない場所まで来た。


 あとは【空歩】で王都まで最短距離を全力疾走するだけだ。


 -------------


 【空歩】の全力疾走で王都までは4時間ほどで着いた。

 空気抵抗を緩和したり、身体強化など全力を尽くした結果だ。

 馬車で移動すると20日ほどの距離らしいので、かなりの速度で移動できたみたいだ。


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