第15話

 大通りから少し外れたところに宿屋が集まっている区画がある。その中から手頃な宿屋に決めた。1泊5銀貨(日本円で5000円)で10日分を支払って部屋に入った。


 手っ取り早く金稼ぎが出来る高級繊維を部屋の中で作ろうと思う。


 シルクスパイダーの繊維で1mx50mの反物をいくつか作成する。黒色、白色、エメラルド色、ルビー色、シアン色を用意した。


「カグヤ、ここに出してある色の糸玉作っておいてくれないか」

「わかりました」


 各色ごとに糸玉の状態のものを2つずつ作ってもらった。縫い糸などに使えるだろう。


 高級服飾店に売りたいためサンプルとして、男性用の黒色のカジュアルスーツ、女性用のシアン色のイブニングドレスを作成した。今世での高級服というのがわからなかったため、前世の知識を元に作成したのだった。


 自分用にハイエンチャントスパイダーの糸で、冒険者風の上下の服を作成、黒をベースに赤の稲妻のような模様をオシャレとしてデザイン。外装は暗い藍色にした。


「リン、外装の外側だけ、スライム液で防水加工しておいてくれないか」

「わかったー」


 外装はこれで防水加工ができた。


 ハイエンチャントスパイダーの糸はかなり頑丈で鉄装備よりも丈夫だ。また自分自身の【繊維マスター】から生成したため、体の一部のように闘気、魔気に流せる一品に仕上がっている。


 そのまま宿で夜食を取って寝た。


 朝になり、宿にリンとカグヤを残して、高級商店が並ぶ区画に向かう。その中から高級服飾店を見つけると中に入った。


 そのまま店員のそばまで行く。


「いらっしゃいませ。」


「店主か仕入れ担当の者を呼んでくれ。」


「どういったご用件でしょうか?」


「これらを買い取って欲しい。」


 シルクスパイダーの糸で作った反物をいくつか荷物袋から取り出して、店員に見せる。


「承知しました。少々お待ち下さい。」


 しばらくして、店主らしき妙齢の女性が現れた。


「店主のキャサリンです。買い取りを希望だとか。奥の商談室へお越しください。」


 案内してくれる店主の後ろをついていく。


 商談室に入ったところで、荷物袋からすべての商品を取り出す。反物が5色、糸玉が5色、スーツとドレスが机に並ぶ。


「これらを買い取って欲しい。」


「査定しますので少々お待ち下さい。」


 5分ほど経過して。


「なるほど、シルクスパイダーの素材ですね。状態もかなりいいです。うちで買い取る場合は金貨250枚(日本円で2500万円)となります。内訳としては、スーツとドレスはそれぞれ金貨50枚ずつで合計金貨100枚。反物は1色ごとに金貨20枚ずつで合計金貨100枚。糸玉は1色ごとに金貨10枚で合計金貨50枚です。お客様が商人ギルドの会員でないからですね。商業ギルドでの正規の取引であれば金貨500枚(日本円で5000万円)にはなると思います。もし正当な取引がしたい場合は商人ギルドで直接買い取りされるといいでしょう。」

「いや、金貨250枚で構わない。商人ギルドだと取引に時間がかかるだろう。すぐに現金が欲しいんだ。」

「承知しました。今、現金を用意しますので少々お待ちを。」


 5分ほど経過して。


「お待たせしました。金貨250枚です。ご確認ください。」


 さっと数えたフリをしつつ、実際はギフトで確認した。


「確認した。ありがとう。」


 金貨を受け取って、店をあとにした。


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