第9話
その日は僕とリン、ルナとカグヤで森に入っていた。12歳と1ヶ月を過ぎたころくらいの話だ。高速思考は9倍、並列思考は89、魔力量は5500億程度になっていた。
このころにはカグヤも成長して10歳くらいの見た目になっていた。何度か進化していたかもしれない。
ゴブリンの間引きをしつつ、食料になりそうなものを探していた。
そろそろ十分な成果を得られたかな、と思って村に引き返そうと進行方向を変えたときに村の方角から煙が上がっているのが見えた。
なにかよくないことが起こっている、そう思った僕は荷物になってしまう今日の成果を投げ捨てて、リン、ルナ、カグヤ、と村へ急ぐのであった。
――――――――――――――
シルクが森へ入っている頃、それまでの村はいつも通り平和な時間が流れていた。
畑で仕事をしていた村人の一人が異変に気がついた。空を飛ぶ大型のモンスターの姿を見つけたのだ。すごい速さで村に近づいてきている。大きな翼に真っ赤なトカゲのような体、レッドドラゴンだった。レッドドラゴンはBランクにあたる魔物だが、鱗が頑丈で物理も魔法も効きにくく、Bランクでも上位に位置している。
村人は大声を上げながら村を走り回った。
「ドラゴンが出たぞー! 逃げろー!」
畑にいた村人はその声でいち早く気がつき、同じように声あげながら村を走り回る。
家の中にいた村人は慌てて外に出て、ドラゴンを見ると逃げ出した。
普段森で狩りをする狩人衆は、村人が逃げる時間を稼ぐためにドラゴンに攻撃をするために集まりだしていた。
ドラゴンは村の中心地である広場の上空で滞空しつつ、ファイヤーブレスを建物に放った。ゴゥという音の後に爆発音が鳴り響く。ドラゴンは自分のブレスに満足したのか、空から降りてきた。
狩人衆は弓でドラゴンを牽制するために建物の影に隠れつつタイミングを図っている。
Bランクであるレッドドラゴンに対抗できそうなのは村ではジンクとシンシアくらいだ。他の者では弓で牽制するのが精々であろう。
そのジンクとシンシアは冒険者時代の装備品をキッチリと装備するために合流するのが少し遅れていた。その間にも村では被害が広がっていた。
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ジンクとシンシアが広場についた頃には5つの建物が破壊され、狩人衆は数名が犠牲になっていた。
「シンシアは重傷者の治療を頼む。俺はヤツを引きつける。」
「わかったわ。気をつけてね。」
ジンクはミスリル製のライトアーマーを身に着け、ミスリル製の盾と剣を持ちドラゴンへ走り出した。
ジンクは元Bランクパーティだったわけだが、パーティとしての総合力がB相当というだけで、一人でBランクのレッドドラゴンに倒せるわけではない。シンシアが合流するまで致命傷を避けつつ、嫌がらせのような攻撃を加えるのが精一杯だ。
ドラゴンの爪によるひっかきを盾で受け流し、ブレスは接近して後ろへ回り込むように避ける。接近戦による遅滞行為を行っていた。一度でもダメージを喰らえば致命傷となる綱渡りのような行為を行っていた。
――――――――――――――
シンシアのほうは重傷者から順番に回復魔法を掛けていった。中には死ぬ寸前という重傷者もおり、必死の治療行為を続けていた。
自身の回復魔法の限界を超えるような治療を行ったときに、シンシアの右手の甲にある紋章と同じものが、後光のように光が浮かび上がった。周りは誰も注目しておらず、誰にも知られず終わるかと思われた。
「やっと見つけたぞ。」
真っ黒のローブを来て、顔を隠したその男は村外れの民家の屋根の上から、そう呟いた。
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