少年期
第6話
この日は10歳の誕生日だった。高速思考は7倍、並列思考は64になった。最大魔力量は3億くらいだ。
朝起きたときにギフトを獲得していることを自然と感じる。ギフト名は【糸使い】、糸を出したりまとめたり、操ったりすることができる、と当たり前のように理解していた。
正直、【糸使い】にはすごい可能性を秘めていると直感した。原子、分子、電子、などの基本物質には敵わないけど、繊維って細かいじゃん。カーボンファイバーだって繊維の集まりって言えるしね。あらゆる素材は繊維状にすれば極論、糸って言えるはず。
さっそく手から糸を出してみる。シューと糸は伸びていく。まぁ伸びていって終わりなんだけど。某蜘蛛男の人のようにアクロバティックなことは出来なさそうってことはわかった。
朝、着替えているときに思ったけど、着ていた服の糸や布の構造が理解できる、というかラーニングするといった感じの感覚を得ていた。手から糸を出すと、やはり服と同じ素材の糸であることは間違いない。糸や繊維をラーニングして再現できるというのはすごい能力だ。
糸としてのバリエーションなら蜘蛛系の魔物しかないでしょ、と思った。今度の休みに蜘蛛刈りに出かけようとしよう。
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朝ごはんを食べているときにギフトの報告をすることにした。
「父さん、ギフトが発現したよ。ギフト名は【糸使い】だってさ。」
「おっ、ギフトが発現したんだな。さっそく教会へ行って報告しなければな。」
「おめでとう、シルク。」
「おめでとう、お兄ちゃん。」
「あぁ、ありがとう。」
ギフトを発現したら教会に行ってギフトの報告をしなければならない。このときばかりは両親は仕事を休んで一緒に教会へ行った。
神父の前に行って報告する。
「僕の名前はシルクです。ギフトは【糸使い】です。」
「なるほど、Eランクのギフトですね。今日はもう帰っていただいていいですよ。」
この世界には鑑定の魔法やスキルはなく、ギフトは自己申告なのだ。
思ってたよりあっさりと終わったな。Bランク以上のギフトであれば、王都から人が来て確認されることもあるらしい。希少ギフトなギフト持ちは国で厳重に教育・管理されるらしい。
個人的には【糸使い】には可能性を感じているので、他人からの評価はどうでもいいと思った。
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【糸使い】で出来ることを確認していこう。糸が出せる。糸で拘束する。糸で切断する。糸が出せるなら布も作れるってことで、糸を操って今来ている服の複製を作ってみたりもした。
糸から作った服は見た目は同じだが、僕の魔力・闘気との相性がすごくいいことがわかった。軽装甲の鎧を着るよりも、強力な蜘蛛の糸から作った服や外装に魔力を込めたほうが防御力が上がりそうだ。僕は手数で戦うタイプなので、動きやすさという点でも相性は良さそうだ。
あと気がついたのが、細かい糸の繊維というか粒子を空気中に漂わせることができる。現時点では自分を中心に10メートルほどの領域だ。【解析】と同じことが遠隔できるようになったのは大きい。現時点での分解能は最大で0.1秒間隔で1ミリメートルを感じることができる。【解析領域】とでも名付けようか。
人間でも魔物でも、動くときには予備動作があったり、筋肉に力が入ったり、魔力の流れが変わる。そういうところに目を向けなくても情報として入手できるのは、やはり強力だ。
【解析領域】は便利な上に早く熟練度を上げたいので常に展開しておこう。
あと、教会から家に帰ったときに気がついたのだが、【解析領域】を展開したままリビングを通ったときに、リビングに置いてある本をスキャンできたのだ。本は紙で出来ていて、紙はパルプというか繊維の集まりだ。
スキャンした本の中身はシーに解析させれば、自分で本を読んだように理解できた。
ということは、図書館のようなところを【解析領域】を展開しながら歩くだけで、本が読めてしまう、ということだ。
今後、大きな街にいったときには図書館に寄ることを決めた。
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「父さん、今日の模擬戦ではギフトも使うよ。」
「ギフトって糸使いだろ? 戦闘に役立つのか?」
「まぁ楽しみにしててよ。」
このころになると、僕も父さんも闘気を使って、結構マジなレベルで打ち合っていた。力は父さんのほうが若干有利、僕のほうは手数と足の速さでカバーしていた。闘気と身体強化の合成技である【金剛気】は強力すぎて訓練には向いていないので使っていない。
実力としては結構並んでいると思っている。【解析領域】で筋肉の動きや呼吸、重心や注視しているところがまるわかりだ。これを高速思考や並列思考で丸裸にされれば、対戦相手からすれば2,3手先を読まれているように感じることだろう。
いつもと同じように剣を打ち合っているが、父さんの全ての行動が手に取るようにわかる。同じような回避にも余裕があるのか、余裕がない行動なのか、そういう小さな情報が全体としての優位を確立していく。
この日、初めて父さんに本気で1本取ることができた。まぁ奥の手はまだあったとは思うけど、勝ちは勝ちだ。すごくうれしかった。
「結局ギフトはどこに使ってたんだ?」
「細かい粒子状にして、空気中に散布してたんだ。そうすることで相手の行動が先読みできるんだよ。」
「どうりでやりづらいと思った。いつもと違う感じがしたのは、そういうことだったんだな。」
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