続編ということで『前作』のネタバレありきのレビューとなっております(今作の深いネタバレはないのでチェックはいれてません)。面白すぎてすぐに読破できてしまう作品ですので未読の方はぜひ前作から。あまりネタバレ気にしないよという方はこのレビューからお読みいただいても大丈夫です。
魔界に嫁いできた麗しき銀髪の姫アウゲと、次代の魔王となる夫ヴォルフ。困難を経てようやく結ばれ、穏やかな魔界での生活を送っているふたり。前作からのファンとしてはもうこのシーンだけで一枚の絵画として保管しておきたいような尊さですが、そんなふたりに新たな試練の気配が。
それはヴォルフが正式に“魔王”として冠を戴くための厳しい試練。内容自体がとても面白いのでここでは少ししか明かせないのですが、なんとこの勝負には妻であるアウゲの存在が必要不可欠。どちらかが敗北すればふたりから永遠に平穏が去ってしまうほどの危険を孕んだものだったのです。
芯が強く気高いアウゲと、飄々として笑顔を崩さないヴォルフ――そのふたりにもちゃんと弱点があり、試練は的確にふたりを追い詰めていきます。それは恋を経験した誰もが身に覚えがあるような恐怖や嫉妬だったり、あるいは……。ふたりにとっては辛いでしょうが、読者としてはおおおっと盛り上がる展開がてんこ盛りなのでぜひ楽しんでいただきたいです。
蠱毒姫の“孤独”は本当に終わったのか。愛する者を得るということは、本当に強くなることなのか?ふたりを引き離すことでそれぞれの変化を丁寧に描き、同時に成長のための揺さぶりをかけていく作者の手腕はお見事。その試練の渦中だからこそ、前作と変わらないキャラクターの心の強さが光ります。本当にお互いのために結ばれたとしか言い様のない、素敵なふたりです。
メインのふたりはもちろんのこと、前作では少ししか見られなかった魔界の面々も個性豊かで楽しい!圧倒的な力を持つ美女である現魔王のママ上と、穏やかで知的なパパ上。ため息をつきながら今回もなんだかんだ助けてくれるトカゲ族の執事頭。ヴォルフの親友である翼竜族の王子はまさかの方言持ちで場を明るくしてくれます。そしてこちらはこちらでロマンスが花開こうとしている、魔界の騎士たち。うーん、何から何まで麗しいです……♡魔界住みたい。
最終話では、シリーズタイトルにもなっている『蠱毒姫』への本当のアンサーが示されているように感じました。ここまで彼女の奮闘を見守ったファンなら号泣必須の優しいラストに胸がいっぱいです。読んでよかったと胸を張れる作品!
必要な設定をちゃんと押さえているのにくどくなく、それでいて香り高い紅茶のような上品さも備えるリッチな物語。どなたさまもぜひ、ご堪能くださいませ。