第13話 幼なじみの転生は気付けない(13) SIDE マリー
SIDE マリー
今日も私は、侍女から街の様子を聞いていた。
「本日も街は賑わい、マリー様を讃える声であふれております」
うやうやしく礼をする侍女。
うん、コレ絶対ウソだよね!
ホントのこと報告できなくて、良いことばっかり言ってるやつだ!
社会人時代に経験あるよ!
同期が失敗を隠してて、発覚した後に部署総出で尻拭いしたやつね。
「他に何もないのですか? 例えば私の悪口とか」
「滅相もございません! マリー様は街中の憧れでございます」
こりゃだめだ。
下手なことを言えば自分の命がなくなると思い込んでるだろうし、これ以上追求しても無駄だろう。
しょうがない。
アレをするしかないね。
◇ ◆ ◇
私は侍女から服を借り、髪を薄汚れた帽子に隠し、化粧を落とした。
うん、どう見てもただの町娘だ。
侍女の目を盗んでそっと屋敷を出た私は、街へと繰り出した。
おしのび散策というやつである。
子供の頃に見た時代劇みたいでちょっとワクワクするかも。
酒場で一人、ぶどう酒をチビチビやりながら、周囲の会話に耳をそばだててみる。
日がおちかけたばかりとあって客はまだ少ないが、その分、会話は聞き取りやすい。
私は二人組の冒険者の近くに席を取った。
「『マ』から褒美をもらったヤツがいるらしいぞ」
「マジ? 殺されるのかそいつ?」
「噂によるとまだ生きてるらしいが、恐怖で家からでられなくなっちまったとか」
「そりゃそうだよなあ。オレなら街を出るね」
「オレもだよ。もしかして、弱みを握られてるのかもな」
「ありそう。逃げても追っ手が来そうだしなあ。誰だか知らないがかわいそうに……」
『マ』って私のことだよね?
隠語かな?
昔ケンが『某ロボットアニメでスタッフロールに「マ」ってキャラが載ったことがあってな』なんて全く興味のない豆知識を披露していたのを思い出す。
それにしても私の行動、逆効果になってない?
侍女の報告が嘘っぱちだったのは予想通りとしても、評判下がってる気がするよ。
あの勇者さん、引きこもっちゃったの?
「それはそうと、噂の勇者はすごい活躍らしいじゃないか」
あれ? ひきこもっちゃったんじゃ?
私が誰にご褒美を上げたかってことは伝わってないのかな。
噂ってのはあてにならないなあ。
「夜中まで狩りを続けてるってな」
「見たヤツによると、目が血走っててどっちが魔獣かわからんくらいらしいぞ」
「一人で依頼をガンガンこなすせいで、オレたちがおまんま食い上げだけどな」
「オレが聞いた話だと、えらくかわいい魔道士と組んでるって話だけどな。勇者をちょっとシメちまおうなんて話も出てるらしいぜ」
「マジ? 返り討ちじゃないか?」
「それがな、緑龍団が動いてるらしいぜ」
「ギルド内ランクトップのアイツらが?」
「そう、裏で色々やってるアイツらだ」
「あーあ……そりゃ災難だな」
「オレらは騒ぎが収まるまでのんびりやるさ」
「そうだな。巻き込まれるのはごめんだ」
これって……私のせいで勇者さんがひどい目にあうってことだよね。
なんとかしなきゃ……。
私の評判も心配だけど、それ以上に私のせいで不幸になる人を増やしたくないもの。
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