第14話 幼なじみの転生は気付けない(14) SIDE ケイン

SIDE ケイン


 マリーに殺されないようにするため、オレは三日三晩ギルドの依頼をこなし続けた。

 それはもう昼夜関係なく、受けられる依頼は全て受け、魔獣を狩った。

 自分の能力が異常な上昇をしていくのは、現代では味わえなかった快感だったが、さすがにそろそろ睡眠をとらないと、歩きながらでも寝てしまいそうだ。

 森で助けた魔道士の少女――名前をメグと言った――がお礼をかねてと言って狩りを手伝ってくれたが、2日目の昨晩魔力切れをおこして今は寝込んでいる。


「なあ勇者さんよ」


 ボロ宿に戻ろうとふらふら路地を歩いていると、4人組の冒険者が前後を挟むように現れた。全員、20代中盤といったところか。

 格好を見るに、タンク、物理系アタッカー、魔法系アタッカー、魔法系サポーターとバランスのよいパーティだ。

 しっかりした装備品から察するに、かなり稼いでいるのだろう。


「何か用か?」


 とぼけてもよかったが、眠気で頭が動いていなかった。

 それに、相手はこちらの顔を知っているようだしな。


「だいぶ派手に稼いでるみたいじゃねえか」


 明らかなインネンをつけてきたのは、リーダー格の男だ。

 装備は物理系アタッカー。

 イケメンの部類だろうが、人を小馬鹿にしたような笑みを顔に貼り付けている。

 オレの嫌いなタイプだ。


「そろそろ宿と装備を変えてもいいかもな」


 たしかにギルドからの報酬もかなりたまったし、いつまでも安ものの武器というのも効率が悪い。

 転生前は稼ぎが悪かったから、どうにも節約グセがついている。

 宿を使うとなると家賃がかかるようになるが、いつまでもカビ臭い家に住んでいるのも病気になりそうだ。


「そういうこと言ってんじゃねえってわかってるよな?」


 かわされてイラっとするなら、最初からインネンなんてつけなきゃいいのに。


「用があるなら、さっさとしてくれ」


 こっちは眠いんだ。


「生意気なヤツだ。いいか、これ以上この街で荒稼ぎするんじゃねえ」

「なんであんたにそんなこと言われなきゃならないんだ」


 魔獣に襲われる人は減るし、悪いことなんてないだろうに。

 ギルドへの依頼が枯渇してはいないのだから、十分に稼げはするだろうし。


「新入りは黙って言うことを聞いてりゃいいんだよ」


 4人が同時に、オレに武器を突きつけた。

 転生前のオレなら、財布の中身を置いて逃げ出していたところだ。

 だが今は、目先に突きつけられた刃物が怖くない。


「警備兵さんこっちです!」


 オレがそっと個人の剣に手を伸ばそうとしたその時、路地裏に女性の声が響いた。


 これはマンガなんかでよく見る「おまわりさんこっちです」の術!?

 誰だか知らないが助かった。

 ひと暴れしてもよかったが、穏便にすむならそれにこしたことはない。

 しかし、リーダーは慌てた素振りは全く見せない。


「カミラ、見てこい」


 リーダーに命令された魔法系サポーターっぽい女性が、大通りへと歩いていく。

 すぐに戻ってきた彼女の手から伸びた魔法の鎖の先には、目深に帽子をかぶった地味な町娘がつながれていた。


「人助けのつもりだったか? 相手が悪かったな。ギルド内ランク1位は、警備兵に捕まらない。そんなことも知らなかったとはな」


 だからこその余裕であり、オレを脅した理由なのだろう。

 この感じだと、人に言えないことを色々やっていそうだ。

 ランク1位から転落した瞬間、逮捕なんてこともあるのだろう。

 その特権惜しさに、出る杭を叩いているということか。

 ご苦労なことだ。


「その人を放して!」


 町娘は気丈にも、オレの解放を要求した。

 捕まってるのは自分だろうに。


 現代ほど文明が進んでいないこの世界で、自分より他人を助けることを優先できる人なんてそうそういない。

 逆に罠を疑ってしまうほどだ。


 ここで助けなきゃ仮にも勇者なんて呼ばれる資格はないよな!

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