第17話 それぞれの決着(前)-4
私は目の前の光景を疑った。
ラナが魔法の名前を叫んだ後、視界は真っ白になった。次の瞬間には、もはや形容する言葉すら見つからない凄まじい轟音が耳を貫いていた。爆風で飛ばされるかと思ったけど、不思議と足元は地面に着いたままだった。
視界が戻り、広がっていた景色に私の知っている「橋」の姿は無かった。土煙とその向こう側に巨大な崖があるだけだ。呆然と前を見つめている私だったが、そこにシャネイラの声が飛び込んだ。
「橋が全壊するかもしれません! ここからすぐに撤退するのです! 急いで後ろにも伝令をまわしなさい!」
我に返った私はラナを探した。左右に首を振ると真横にその姿はあった。
「結界も間に合ったようですね。とにかくここは危なそうなので下がりましょう!」
ラナはいつもの表情、いつもの声でそう言った。私は一度考えるのを忘れて走ってその場から離れた。両手に握っていた剣をしまい、握力のなくなった手でラナの左手を握った。彼女は一度こちらに目を向けた後に、私よりもずっと強い力でその手を握り返してくれた。
◆◆◆
「橋が崩れ落ちるかもしれない!!」
その伝令が前から次々とまわってきました。私とアレンビーさんも、他の人たちと同様に急いで引き返していきました。
「今のって『超級魔法』よね!? あんなの扱える人がいるなんて……」
アレンビーさんが後退しながら問いかけてきました。私も心の中では同じことを思っていました。
――超級魔法カタストロフ。
私たち魔法使いの中でも魔法学の理論上にだけ存在している魔法です。
必要とする膨大な魔力と術者への負荷、複雑を極めた詠唱過程……、そのすべてによって実際に使うことは不可能と言われていた魔法です。
この魔法はたった今、過去形になりました。
ラナはそれを予備動作なしで発動してみせたのです。それも、後ろにいる私たちに被害が及ばないように魔法結界を張りつつ――、です。
私はローゼンバーグ卿にずっと憧れてきました。それが親しげにお話をしてくれるラナとわかってからもです。いつか、彼女のように誰もが知っている有名な魔法使いになるのが夢でした。
だけど、今の力を同じ「魔法使い」と呼んでいいのでしょうか?
桁違い?
規格外?
どんな言葉で表していいかすらわからない。
私が見聞きしていた「ローゼンバーグ卿」は、彼女の力のほんの片鱗に過ぎなかったのです。
今、この目で見たのが真の「ラナンキュラス・ローゼンバーク」の力なんだと……。
アルコンブリッジの半分は綺麗に無くなっていました。もちろん、そこにいたはずのまものの姿も消え、微塵の気配も感じませんでした。
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