第10話 カイゼル~前世、転生、日常~
俺の前世は至って普通だったと思う。普通に大学を卒業してそこそこの企業に就職。同期が出世しても焦る事なくそれなりの日常を送っていた。
大学から付き合っていた彼女と結婚して息子もいた。特に変わり映えもしない日々だったが息子が育つにつれて違和感を感じはじめる。俺にも嫁にも似ていないのだ。なんとなくだが同期の奴と似てる気がする。
表向きは普通に過ごしながら興信所で嫁の動向を探る事にした。やはり同期の奴と浮気していた。
同期の奴も結婚して家庭を持っていたがバレたらどうなるか覚悟はしているだろう。奴とは直接話さずに会社に証拠を提出した。文句を言われたら弁護士が動く手筈だ。
家に帰って嫁に証拠を突きつけて離婚を迫る。養育費の関係で子供のDNA鑑定をすると言ったら泣き喚いて謝ってきた。意味がわからない。俺が悪かったのだろうか。言い訳を聞くつもりはなかったのでその日からホテルで過ごす事にした。
数日してから会社の休憩室で休んでいたら浮気野郎が話しかけてきた。なんかやつれてるっぽいが興味がない。お前のせいで異動になるだの嫁は昔から俺の女だっただの。コイツが絡んでくるのは予想してたので録音してある。改めて会社に提出。ついでに奴の奥さん宛に郵送。嫁と話す前に聞かせてやった。知らなかったが結婚する前からだったとは…。嫁はどうにもならないと悟ったのか息子のDNA鑑定に同意した。アイツも離婚するかもしれないから再婚すれば?と言ってやるとまた泣き喚いていた。
嫁と離婚して数ヶ月。アイツとの息子を連れて実家に帰ったらしい。アイツも異動前に離婚したらしい。俺の元嫁の両親からDNA鑑定の結果を突きつけられて養育費も払わなきゃいけないから大変だね。まあ、なるべくしてなった事だろう。嫁の親からは復縁要請がきたが結婚前から浮気してた女と何をやり直せばいいんですかね?浮気も含めてやり直せと?と聞いたら何も言わなくなった。
変わり映えのない生活が更に味気なくなった。ただ惰性で過ごす日々が数年続く。浮気野郎がまた戻ってくるらしい。親がどうとかで本社勤務を希望したそうな。まあ、もう気にしてないからどうでもいいが。
俺は気にせずに仕事をしているとアイツが近寄ってきた。相変わらずお前のせいで散々な生活を送っているだの新しい女はどこかの社長令嬢だとか。その女はお前の過去を知ってるのか?と聞くと余計な事をしたらぶっ殺すだの俺の元嫁の動画を流すとか。コイツは学習能力がないらしい。いろいろ脅迫された気がするので警察と会社に証拠として録音をコピーしたデータを渡した。
脅迫罪として罰金と会社から謹慎後に解雇が決まったらしい。いや、怖いね。とか思って日常を過ごしていたら突然背中に激痛が走る。浮気野郎に会社の中で刺されたようだ。荷物を整理にきたという理由で出社してきたらしい。昔から気に食わなかっただの死ねば全て上手くいくだの。他の社員に取り押さえながらもわめき散らす奴を見ながら(ああはなりたくないな)と思った。それからはよくわからない……
なんか気付いたらこの世界に生まれてた。生まれる前に神様っぽいのに「ハズレですね」とか言われた。失礼すぎる。
生まれてから19年。この世界についていろいろとわかった。俺の他にもこの世界にきた奴がいるのだろう。生活水準はそれなりに高かった。流石に田舎の村に水道とかはないらしいが発展している王都とかなら普及しているらしい。
俺は村長の息子らしい。俺のように前世で異世界の記憶を持つ者や異世界から召喚された者は勇者と呼ばれるようだ。過去の勇者の悪行のせいでかなり不遇な扱いを受けている。まあ、そいつらの気持ちがわからなくはない。こんな世界で娯楽なんかない。ハーレム作るくらいしかやる事ないんじゃないか?勇者は魔法使えないらしいし。
勇者はギフトとかいうスキルを貰えるらしかったが最近はスキルがない事のほうが多いらしい。ハズレとか言ってたからな。俺にはギフトを授ける価値がなかったんだろう。
小さい頃からいろいろと面倒を見てやっていたマークとシャルテが婚約したらしい。祝ってやりたい気もしたが面白くはない。俺にも婚約者がいるが牧場の娘だ。顔はイマイチだし好みじゃない。村長の親父が決めたから反対もできない。シャルテは女らしくなってきた。マークのチビには不釣り合いだろう。とはいえ正面から奪う気もない。つまみ食いだけで勘弁してやろう。俺は得意の話術を使ってシャルテを騙して抱いてやった。なんとなくだが前世の同期の奴の気持ちがわかった気がする。他人の女を抱くのは優越感がある。バレたらマズいという背徳感もあり俺はシャルテを抱くのをやめられなかった。結婚するまで遊び尽くしてやろう。
シャルテを抱いてからすぐに俺は他の女にも手をつけはじめた。もちろん避妊はしている。生活魔法にあるらしい。女に使わせて俺は安全な浮気を遊び感覚で楽しんでいた。そんな日常が崩れさるとは思わずに…
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