第24話 萌芽

 俺たちは駆けた。階段を上がって地下1階に戻り、駆けつづけ、洞窟を出た。

 日の下に出ると、小さな岩に腰を下ろして休んだ。

 洞窟内では大ネズミや巨大な甲虫などに出くわしたが、なんとか追い散らして先を進んだ。スケルトンは足が遅いようで、追いつかれることはなかった。


「一気に3匹も出るからびっくりしたよ…。」

 俺が息を切らしながらこぼすと、グリシャが涼しい顔で言った。

「序の口です。もっと出ることもありますよ。…と偉そうに言っても、僕も自分で経験したことはないんですが。それにしてもあの3匹はいかにも手強いですね。」


 グリシャは実戦経験こそ乏しいものの、オークが種族として蓄えた知識を伝授されているため、魔物にも詳しい。

 スケルトン。それは動く骸骨の魔物で、強さもピンキリだという。丸腰の白骨がただ徘徊しているだけのものから、武具で身を固めたり、集団で現れたり、中には魔法を使うものすらいるらしい。

 ついさっき犬人マルマリのスケルトンに遭遇したように、エルフ、鳥人ガルダ蜥蜴人ナガなどいろいろな種族、また動物の骨から、果ては竜に至るまで実に多彩なのだ。

 サード・ガーディアンや俺たちのようなダンジョン潜りのパーティがそのまま全員スケルトンになったと思われる集団も多数目撃されており、先ほどの3匹もそうかもしれないとのことだった。


 当たり前だがダンジョン潜りは一瞬の油断が命取りだ。一歩間違えば俺たちもあのスケルトン集団のようになってしまうかもしれない。


 今、俺たちのパーティは始動したばかりだが、このままうまくやっていけそうな気がしている。

 グリシャは若いが堅実な剣士だ。この世界でのオークの評判がどうであれ、こいつは信頼できると俺は思っている。

 そしてウェノラも、本人は弱いと謙遜しているが、ダンジョン潜りをずっと生き延びてきた強者だ。

 これはかなり良いチームが結成されてきたのではないか、と思わずにいられない。あとは俺も装備を整え、技能を模索して強くならねば。


「俺も役に立てるようがんばるから、しばらくこのパーティでやっていきませんか?」と、改めて尋ねてみた。


 グリシャは「お願いします!」と元気にほほえんだ。今まで拒絶されてきたから、受け入れられるのが嬉しいようだ。もっとも、俺はオークに忌避感がないからあまり感慨はない。まぁ、この牙をむき出してほほえんだ顔も恐いと言えば恐いが、それを言えば体格のでかい犬の獣人も恐いし、炭色の小人ノームも恐い。


 対してウェノラは曖昧に頷いただけだった。

「ユーダイさんも装備を整えなきゃいけないし…とにかく、しばらくは一緒に稼ぎましょう。」と言うだけにとどまる。やはり決まったメンバーでパーティを組むというのは彼女の本意でないらしい。


 俺たちはしばらく休んでから、町へと続く上り坂を歩きはじめた。町に着いたら鉱石や戦利品を売ったり、鑑定してもらう必要がある。ダンジョン潜りもなかなかに忙しい仕事だ。

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