第22話 油断大敵!
「帽子!服!ケープ!ブーツ!短剣!」
俺は身を乗り出して、グリシャが指さす先を見た。魔法の光が淡く照らす中、それらは輝いて見えた。
丸くつばのない赤い帽子。襟の高い深緑色の服。帽子と同じ赤色のケープ。革のブーツ。そして短剣。まさに俺が欲しいものがそっくりそのままだ!
ただし問題は、それらの装備が白骨死体とともにあることだ。より正確に言えば、装備を身に着けた白骨が、湿っぽい洞窟の地面の上に倒れているのだった。
「うわー。めっちゃ死んでますね。冒険者が誰か、ここで倒れたってこと?」
グリシャが少し考え込むような顔をして、答えた。
「正確なところはわからないですね。ダンジョンは特殊な空間なので、物が消えたり現れたりするんです。この骨も最近のものとは限らないし、ずっと昔のものかもしれません。」
「これも戦利品…。ユーダイさん、もらっていってもいいんじゃないですか?」
ウェノラが言う。
「え、これはいいの?死体漁りじゃなく?」
「あー…。場合によるんですよね。このぐらいの白骨だと遺跡みたいなものなので、いいと思います。倒れたばかりの死体だと、仲間が回収に来ることも多いので、そっとしておくことが多いですね。」
なるほど、そのあたりは複雑な事情とかが絡んでくるらしい。この場合は装備をもらっていってもいいみたい。とはいえ…。
「戦利品はうれしいけど、骸骨が着てたやつちょっと薄気味悪いなぁ…。ウェノラさん、消毒の魔法とかあります?}
と半ば冗談、半ば本気でウェノラを振り返って尋ねると、彼女の目が大きく見開かれた。
「離れて!」
ウェノラが叫び、彼女の杖が俺の胴を思いきり打った。殴り飛ばされて、仰向けに転がる俺。刹那、目の前を何かが通り過ぎた。
斬撃だ。
倒れたまま上に目をやると、当の白骨が立ち上がっている。俺は驚愕した。とにかく危険な状況らしい!
俺は這いつくばってその場を離れようとする。
グリシャが気合の叫びとともに骸骨に剣を叩きつける。剣は左腕に命中し、骨の腕を吹き飛ばした。だが骸骨は意にも介さず、ひるむことなく短剣を持った右腕をグリシャに向かって突き出した。グリシャはなんとかガードするが、彼の黒剣はそのままはじき飛ばされた。
骸骨は音もなく前進しながら、短剣をグリシャの頭に振り下ろそうとする。
「ウォーン!」ウェノラが叫んで跳びかかった。
杖が骸骨を打つ。二度、三度と杖で殴られて、骸骨はよろけた。
その隙に黒剣を拾い上げたグリシャも骸骨に斬りかかり、骸骨は体をバラバラにされた、ついにグリシャが頭蓋を叩き割ると、魔物は動かなくなった。
俺たちは荒い息をしながらお互いの無事を確かめ合った。
「危なかったですね。気をつけて進みましょう…。」
ウェノラが言い、また前方を照らしはじめた。
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