大都市ゴッタ・ガエース
第14話 ウェノラ、語る!
思いきって啓示石を使うことにする。そう告げると、ウェノラは、明日図書館に行こうと言った。
なんでも図書館というのは書物や文献を管理し研究するだけにとどまらず、神殿の一種だというのだ。知識の女神エスの神官団が運営しており、鑑定や分析を一手に担う施設らしい。
10杯以上のビールを飲みようやく酔いが回ってくると、ウェノラは饒舌になり、延々といろいろな推し冒険者について語り出した。
彼女の中で最近いちばん熱いのが、ネクロマンデスというパーティらしい。四人のメンバーたちはそれぞれ東方三冥神と闇の神エンシに師事する魔術師のみのチームだ。四人とも陰鬱でまがまがしい外見ながら、意外にも明るくかわいげのあるキャラクターとのんびりした配信でファンが急増中とのこと。
ネクロマンデスのメンバーの肖像が描かれた護符を並べて見せながら「ギャップ…いいですよね…。」とつぶやくウェノラの口元からは少しよだれが垂れていた。
ウェノラの話はサード・ガーディアンのことにも及んだ。
「ウェノラさんもやっぱりサード・ガーディアン好きなんですか?」
「もちろんもちろん!好き…っていうか、彼らはもう好き嫌いを越えてますよね。基本ですよね。基本にして真理…。」
やはりサード・ガーディアンはすごいらしい。街頭テレビで見た彼らのバトルの迫力には、俺も心を奪われた。
ウェノラはサード・ガーディアンのメンバーについても教えてくれた。
エルフの女、ヤグルマギクは火術と氷術の使い手でクラスは術聖、美しくゴージャスなパーティの顔だ。いかなる窮状にも屈することなく、クールで挑戦的な表情は決して崩れない。
人間の男、ガンディオン卿は金色の鎧と盾で武装した歴戦の戦士でクラスはパラディン、きれいに撫でつけた白髪の下で不敵な眼光がきらめく重鎮だ。常に冷静でありながらも、時に激情に身をまかせる姿は堂々たるライオンのようだ。
サード・ガーディアンというパーティ名は、神々の戦争の時代にさかのぼる勇者イチハル卿のパーティ、そして後に四獄獣の復活を鎮めたボルゾイ卿のパーティにつづく、三番目のパーティとして空想郷を守護するというテーマに由来している。
なんとも壮大な話で、駆け出しのころは馬鹿にされることも多かったらしいが、今では異論なく最強であり、押しも押されもせぬトップ視聴数配信者である。空想郷の皆が彼らの活躍に熱狂していた。
俺もいつかはサード・ガーディアンのように…と思わずにはいられなかった。水術士ウェノラ、そして啓示石で──うまくいけば──強いクラスに就いた俺、他にも強いメンバーを集め…と想像し、少しワクワクしてきた。
俺の都合の良い妄想を破ったのは、背後から聞こえた太い声だった。
「おおう、水術士のやつ!久しぶりに会ったな。」
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