第11話 採掘

 渡された道具は、ツルハシだった。ツルハシといっても、片手で使う金槌のような大きさだ。

「魔法のツルハシです。小さいけど、おもちゃじゃないですよ~。」

 ウェノラがそう言う通り、ツルハシを前腕の力で打ちつけるだけでも石の壁がボロボロと崩れていく。これはすごい。


「この青色と銀色が混じってるのが鉱石ですよ。掘り出しましょう。でもあんまり大きな音をたてないように気をつけて…。」


 俺たちは各々魔法のツルハシを持って、コツコツ、ゴンゴンと壁を崩していった。特に危険な魔物が通りかかることもなく、黙々と作業してこぶし4つ分くらいの鉱石を掘り出すことができた。それぞれのバッグに分けて収納したが、ずっしりと重い。


「たくさんは持てないので、とりあえずこのくらいにしときましょう…。」

 まだ鉱脈はつづいていたが、ウェノラはあっさりと作業を打ち切った。

「深追いせず欲張らず、が生き残るコツですよ。」


「町で鉱石を売ったら、また戻ってくればいいですよね?」

 俺は言ったが、ウェノラの答えは意外だった。

「うーん…次来たときは、まだあるかわかんないです。」

「やっぱり誰かが掘っちゃいますかね?」

「あ、そうじゃなくて…こういうのって現れたり消えたりするんですよ。ダンジョンの中で。」


「え、無くなるんですか?」

「そうなんですよね…次来るともう跡形もなく消えてて、でも他の鉱脈とか通路が出来てたりするんですよ。魔物もそうで。」

「中が変わる…?」

「生きてるんですよね、ダンジョン。誰も理由は知らないんだけど。」


 というわけで、ダンジョン内はころころと変わるらしい。なんとも異様な場所だ。


 ともあれ採掘も終わり、ワンドと合わせて売ればある程度のお金になるとのことだったので、はじめてのダンジョン潜りは成功のようだ。とにかく派手に怪物とやり合うものだと思っていたが、こういうスタイルもあるようだし、この方が平和でいい。俺は少し安心した。


 しかし、帰ろうとしたその時、今しがた崩した壁に目をやると、何かがきらりと光ったのが見えた。

 俺は気になって近寄った。緑色の光は、岩の亀裂の中から出ている。

「ウェノラさん、なんかありますよ…。」

 俺はそう言いながら亀裂の中を覗き込んだ。


 突如、目の前に勢いよく何かが現れて、俺の首に巻きついた!


「ウワァァァ!!」

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