第14話 ノア殿下、少しは興味を持ってくれたのかな…?

「……怪我はないか?」

「い、いえ、どこにも……」


 ノア殿下が私の前へやってきて、聞いてくる。

 心配してくれてる……? まさかね、と期待を紛らわすためにため息を吐く。

 いや、それよりも。


「ノア殿下、どうしてここに?」

「……」


 王都のど真ん中にあるし、普通に買い物だろうか。

 いや、でも今日は平日だ。

 ノア殿下は第二王子だし、公務などたくさんやることがあるんじゃないだろうか。

 疑問に思っていたことを素直にぶつけると、ノア殿下は僅かに目尻を赤くさせた。


「……お前がどう働いているのか、気になったから」

「……え」


 それって、少しは私に興味を持ってくれたということで、合っているのだろうか。

 嬉しくなって、ドキドキと鼓動が速く鳴る。


「良ければ、私の職場を見ていかれますか?」

「……ああ」


 ゆっくり頷いて、ノア殿下は私の後についてきた。

 晴れて万引き犯が捕まり、安心して仕事をする。


 店長に「どうしてノア殿下がここに……?」と言っていたからなんとなく説明したら、にこにこしながらお仕事に励んでくれた。

 店長に指示を出されつつ、検品作業や売り上げ管理、レジ点検を行っていく。

 お客さんが来たからタッチアップやハンドデモを行い、商品を買ってもらえるよう勧めていく。


 ノア殿下は私が退勤するまで傍で見てくれて、ウィロウさんと共に一緒の馬車に乗って帰宅した。


「いつも、あのように忙しなく働いているのか?」

「そうですね……今日は特に忙しかったかもしれないです。万引き犯を捕まえることもしましたし」 


 王宮の廊下でぽつぽつと話す。

 ノア殿下は元々口数が少ない。でも私の仕事内容が気になったみたいで、結構質問してくれた。


「今日は夕食を一緒に食べよう。お前は甘いものが好きだったか?」

「あ、はい! すごく好きです」

「スイーツにキャラメルナッツタルトを用意すると料理長が言っていた。好きなだけ食べてくれ」

「あ……ありがとうございます!」


 こんなに話したのは珍しい。

 その日の夕食もノア殿下はいつもより饒舌で、彼のあまり知らなかった部分を見れた気がして嬉しかった。


 それでも、今日はメイクもしているというのに何も触れてくれなかった。

 殿下は、こういうメイクは苦手なのだろうか。


 どうしてスキル『魅了』が効かないのかわからないまま、ノア殿下の誕生日がやってきてしまった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る