とある元人間の天使のお話 〜墓参りと嫌な再会〜
「とある元人間の天使の昔話」の現在?のお話です。
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「ここに来るのも久しぶりになる…」
そう呟きながら森の奥に歩いていく。
青く澄んだ空、昼下がりのこの時間帯はこの時期になると一気に暑くなる。森の一角、人里から離れた場所には廃墟と化した街の跡がある。そこは私の故郷"だった"場所だ。それほど時間は経っていないと思っていたが、周りに森ができるくらいには過ぎていたんだと少しぼーっとする頭で考える。
本当なら空から飛んで行ってもよかったのだが、もしもあいつに見つかると面倒だから多少面倒でも歩いている。
廃墟と化した街には人はいない。引っ越したのか、殺されたのかもうどちらでもいいが、もう子供の時には戻れないんだと改めて思う。私はここに来た目的を果たすために、建物の跡が残っている街の中を通り抜ける。
「久しぶり、お母さん」
ここに来た目的、それはお母さんの墓参りだった。最後に来たのは眠りにつく前だったはず…。何年寝ていたのかは覚えていない。私以外にも墓参りに来ているのか墓石は綺麗に掃除されていた。私は少し懐かしく思いながら生けてある花を交換すると墓石に手を合わせる。
しばらく手を合わせていると誰かの足音がする。ゆっくりと後ろを向くと一人の天使の男…認めたくないが私の父親が無表情のまま立っていた。
(ああ…会いたくなかった)
そう心の中で思いながらも軽く会釈してその場を離れようと立ち上がる。
すると何を思ったのか、父親は話しかけてきた。
「…お前はまだ私を恨んでいるか?」
当たり前だ、なぜそんな事を尋ねるのかわからない。
「逆になぜ恨んでないと思ったんですか」
冷たく、突き放すようにそう答える。話したくない相手と話すのが、こんなに面倒だと思っていなかった。
「そうか、…アスはどう思うのだろうか」
アス…私のお母さんの名前だ。その名前を父親の口から出たときに私は少し怒りを覚えた。なんで私に聞くのかわからない。恨まれていないと思っているのだろうか、それとも今の父親と私の関係について言っているのか、昼下がりのぼーっとする頭で考えるのは面倒だった。
「さあ、私にはお母さんの気持ちなどわかりませんから」
そう適当に答え、今度こそこの場を離れようと歩きはじめる。
父親は小さな声で独り言のように、
「…次はいつ会えるのだろうか」
そう言った。
そんなこと私は知らない。答えるのも面倒になり、無視してその場を離れた。父親は止めようとしなかった。表情は変えず、ただ少し残念そうな目でこちらを見ていた。
(お母さんの墓参りに来るくらいに大事にしていたのなら、
いなくならなければよかったのに)
私はそう思いながら来た道を戻る。残っている建物には小さな植物が生えはじめていた。この場所はこれからどうなるんだろう…そう考えながら歩く。いつの間にか夕方になっていたようで夕日の光が植物たちを照らしている。私は眠る前では、まだ人がいたはずのこの場所で何が起きたのか調べてみようと思った。
それにしても、父親は後悔をしているのだろうか…私たちを太陽國にいれたことを。
私は天使として生きている、だがそれはいつか壊れるだろう。年々天使の力も悪魔の力も成長している。今は天使の力で悪魔の力を抑えているがそれも限界に近い。本来なら同じ速度で成長するはずの力のバランスを崩しているのだから。たとえ葉月の力で抑えても私の身体に限界がくる。
昔、悪魔と人、天使と人で子供をつくるとどうなるのかという実験があったそうだ。結果は、個人差があり身体の適正によって、完全な悪魔や天使、人になったり、そのまま半血として双方の特徴を持って生きる。片方の特徴を持って生まれるなど様々だった。
だが、この実験でやらなかったことが1つ、悪魔と天使の子供をつくるということだ。研究者たちは"正反対の力を合わせても反発してながく持たない"と予想し、すぐに亡くなってしまうことが予想出来たから、実験の対象にしていなかったのだ。
研究者たちの予想が正しければ、私はながく生きられない。たとえ身体の成長が止まっていても力の成長はとまらないから。
「…私はいつまで生きられるんだろ…」
そんな疑問を口にしながら廃墟となった街の中を歩く。
街の外にでると辺りはすっかり暗くなっていた。私は来た時と同じように、暗い森の中を歩いて帰る。来た時は静かで落ち着くような感じがしたのに、今は冷たく何かに見られているような感じがする。私は昔とは大違いで少し寂しく感じた。
色んなお話の短編集! 華玥 @ruteina
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