第53話:武田騎馬隊と明智機動部隊


 1571年2月

 三方ヶ原

(作者の都合でなぜかこの時代から茶畑がある)



「茶畑を荒らすのは申し訳ないが、ここは急ぐ」


「はい。すでに進撃コースは策定しております」


 いつもの手際で半兵衛っちが地図差し出す。


 地図です



「ご主人様。武田勢の最左翼は小幡信貞の赤備え300を中心とした機動性に富んだ部隊なのです」


 銀髪が目立ちすぎるので、無理に渋染めの頭巾をかぶせたアゲハが報告してきた。最近は、伊賀者の影の実力者になっているらしい。抜け忍だったのに何があったのだろう?


 小幡隊は回り込んでくる可能性大きいね。

 左翼にも山県隊が回り込んでいるらしいし。なにせ2倍以上の兵力あるから持久戦になると、この台地上では厳しいね。

 後ろに回られたら崖から追い落とされちゃう。


「お味方、徳川勢最右翼の酒井忠次殿と、敵の別動隊、武田信豊の800の間を進撃します」


「小幡隊と信豊隊の動きは?」


「信豊隊は秋葉街道が台地に登る坂道に張り付いております。これは動かないものと見ます」


 用心深いね、流石は『動かざること山の如し』。こっちの遠江に散っている兵が秋葉街道を通り、東から来るのを恐れている。


 それにしては小山田隊と真田隊をぶっこんできたけど、こっちを甘く見ているの?



「伝令! 敵小幡隊に動き。前線最東端を回り込んでまいります!」


「やはり来ました。流石は殿の……」


 耳に耳栓。

 心はSAN値アップ!


「では正面から激突か?」


「ここまでくれば致し方ないかと。突撃隊形は第2で?」


「ああ。騎馬鉄砲隊の本領発揮だな」


 まだまだ、騎馬突撃中の射撃なんか無理です。


 だから前みたいに、敵前面までタンデムで2人乗り。

 ぱぱら、ぱぱら、ぱぱらぱ~~~♪


 じゃなかった、

 ぱぱぱぱ~~ん!

 と、敵の突進力を押し殺してからの突撃。


 第2第3大隊での交互射撃で制圧してから、第1と直轄部隊を慶次に任せて敵を中央突破。


 なんかすっご~く華々しい戦いだね。

 これ、俺いなくてもいい?

 出来たら射精、じゃない、写生してみたい。

 心の声が誤変換した! そんな文章ばかり書いていたR18な俺。


 華々しい絵を描き、ネットに絵師としてデビュー!

 あ……、早くネット開発しなくちゃ。あと何日かかるだろう? 冬木の奴を急かさねば。



 俺が高尚な芸術的恍惚感に浸っていると、すでに前方300mに小幡隊の赤備えが見えて来た。


「殿、ここは第1射目が肝要。一式弾の発砲許可を」


「うむ、許す。ただし一人一発だ。大事に使え」


 一式弾。

 まだ一式しかできていないんだけどね、気分です。

 一応、やっぱり三式弾は作りたいので、こうネーミングを。

 九一式徹甲弾も絶対に作る!

 日本中探して『久一』さんという人を探してきて作らせるんだ!



「第2第3大隊。一式弾、弾込めぃ!」


「突撃準備完了」


 金森君が第2大隊の準備が整ったことを伝えて来た。

 この人も器用貧……もとい、万能選手。特に内政マシーンです。正史では飛騨の国に穴掘りまくって鉱山を開発していました。

 そのうち工兵隊を任せようかと。


 すでに200mに接近してきた小幡隊。突撃機動する必要ないみたいね。

 その場で射撃。


「第2大隊。カウンターマーチで各員1射のみ。充分に狙え。遅くなっても構わん。兜首は絶対に逃がすな」


 応!

 という声は聞こえないけど、みんなの左の拳骨が二度、天へ向かって一斉に無言で突き出される。

 やっと様になるハンドサインができたぁ~

 光秀、感激!!


「一式弾、発射! 狙撃開始」


 ぱんぱん、ぱぱぱん!!!


 一斉射撃とは程遠い銃撃音。

 皆様、よく狙っていますね。

 相対距離200m。

 普通のマスケット銃(前装式の銃は全部こう言います)だったら、100mが狙い撃ちの限度。


 でも半年前に思い出したんです。

 あの幕末の戦いを決定づけた銃の発達を。

 有名なミニエー弾。これを作れるんじゃね? と思いましたよ。


 反射炉の実験炉が完成した時、たたらじゃ大量生産できない鉄製品を鋳造できそうと考えた。


「じゃ、いっそのことミニエー弾作っちまえば冬木の野郎に頼らなくてもいい?」


 等と考え、ポリゴナルライフルも結局鍛造で時間がかかるから、鋳造した滑空銃身にミニエー弾でライフル効果が出るでしょ、と。


 早い話がをパクりましたw

 もちろん作れないとこ沢山ある。

 雷管作れないし、大量生産はまだ無理。精密加工も無理。


 だけど

『19世紀並みのライフル銃』

 が装備できたぁ!

 光秀、ヲタク心全開の、魂の咆哮をあげた!


「人身売買するような人非人。この東海の地をもわがものにするべく侵攻してきた逆賊、武田信玄の首を狩れ!

 武田の軍勢一人たりとも甲斐信濃へ帰すな!」


 ……調子こいちゃいました。

 こっちの方が人非人なセリフです。

 どうぞ、ビビった方はお帰り下さいませ。

 追撃はしませんから。


 光秀、そんなに冷血漢じゃないよ。だから恨まないでね。

 ひっそりと生きていきたいです。


「殿の采配である! すでに赤備え、ほぼ壊滅。残るは農民兵の足軽ばかり。騎乗して蹴散らせ!」


 いや、そこまでしなくてもいいんです!

 お百姓さんは大事にしましょう。お米作ってくれる大事な方たち。見逃してあげて~


「殿。ここで中央突破。後ろから酒井殿が戦果を拡大してくれましょう。我らは武田信玄本陣を目指します。その前に、あの名高き『鬼美濃』馬場信春の堅陣がございまする故、ご覚悟を」


 よかった。

 酒井さんがやってくれるのね。

 じゃ、光秀、鬼退治します。

 百姓退治よりも一万倍くらい気楽です。


 さあ、鬼でも悪魔でもかかってこい!

 邪悪なる神も撃破してくれよう!

 特に新興宗教ならうれし涙を流して笑いながら抹殺してくれる!


 ……邪神でも、可愛い女の子なら這い寄られるのも拒みはしないよ。

 SAN値アップしてお出迎えします。



「目標、邪神鬼美濃の首! かかれぃ!」


 今度、邪神オニミーノに守られるヲタク少年のマンガを描こう。

 俺が「いあいあ」の代わりの召喚呪文を考えていると、目の前に鬼美濃の軍勢が現れた。


 召喚しなくても来るのかい!

 テイムアタックして「おにみのは なかまになりたそうに こちらをみている」とか、なんないかな。



 地図です

https://kakuyomu.jp/users/pon_zu/news/16817330651064363364

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