第43話:姉川はどうなった?(浅井長政視点)

 

 <浅井長政視点です>


 北近江。余吾湖東

 賤ヶ岳北東2km。余吾湖北岸南東2km

 余吾川沿い北国街道

 浅井長政



 何もかもが上手くいかん。


 義兄、いや信長がすべての元凶。

 あいつと組んでから、すべてが悪い方へと転がっていく。


 親父殿(浅井久政)から実権をはく奪して、六角から独立したはいいが、そのせいで朝倉との同盟、いや臣従か、いっそう確固にする必要があった。


 それはいい。

 だが六角と争うためにと、織田の妹をめとった。

 市はいい女子だが、親父殿と結託して俺の政治にも影響を持ち始めた。


 そんな女子には見えなかったが。

 そして最近ようやくわかった。その二人を中心として織田の調略が入っていた!


 どうやら竹中半兵衛、いや明智光秀といったか、あ奴が我が家臣に調略を仕掛けて来ていた。


 困ったことに誰が内応しているかわからぬ。

 下手に勘ぐれば本当に内応してしまう。

 それが元で内政まではかどらない。



 よって、確実に信長を仕留められるような罠を張り、内応する暇もないうちに勝利する。

 その機を伺っていたら、奴の方が動いてくれた。


 俺の軍勢を連れずに、後ろをさらけ出して越前朝倉に攻め入った。

 大義はある。

 朝倉を攻めないことを条件として同盟を結んだのだ。

 それを破ったのは信長だ。


 今回はそれを盾に強引に出兵した。


 しかし六角の観音寺城をいとも簡単に抜いた織田の大軍。これを相手にするのに反対した家臣が多かった。

 士気は低い。


 だが戦場となれば勇敢に戦うのが近江の武士よ。




「長政さま! 織田勢、余吾湖の北に陣。およそ1000」


 浅井の隊列は余吾川をさかのぼり、北にある刀根越えを目指している。北国街道から西の塩津と海津を押さえるため、それを分断する南北に長い山地を超える。


 最近、近江商人どもが自腹で街道整理をしたために、刀根越えが楽になった。必ずや信長の後ろへ出ようぞ。



 そう思っていたが。

 余吾の北の狭い山岳に織田の軍勢?


 ここを1000もの軍勢で押さえているということは、すでに我らの離反が悟られ、信長が引き返し始めた?


 ここで信長を逃しては、浅井は各個撃破される。朝倉は相当有利な状況にならねば重い腰をあげない。



「皆の者! 余吾湖北に転進! あのような守りにくい地。奴らは土地を知らぬ。一気に抜いて織田の背後に出る!

 さすれば南近江は我らのものぞ!」


 応!!


 そうだ。

 この辺りの山岳には無数の道が走っている。

 そこを手槍を持った者だけで駆ければ、すぐに敵の後ろへ出られよう。


 我らの軍勢5000。

 後備え1000を残し、先手2000は左右の山岳を通り、敵の後背を伺う。織田の後続がないのを確かめて包囲撃滅してくれよう。

 後続がいればいたで、直ぐ引き返そう。


 残るは……


「北国街道はどうだ?

 敵はいるか?」


「はっ。物見からはいないとの報告。土地のものもそう申しておりまする」


 まさかの為であるが、刀根越えの安全を確かめるために放った物見が無事を知らせて来た。

 自領であるが念には念をと、先手勢の(磯野)員昌が進言してきた。

 それも自らの手で念を入れての物見を出すという。


 あいつが裏切る筈がないので任せた。



 さて、これから働いてもらうぞ。

 先手勢を先頭に織田の後ろに出る!



 ◇ ◇ ◇ ◇



 余吾川沿い北国街道。

 余吾湖北、織田と浅井の軍勢が激突し始めたところから、北4km



「殿、全て順調に運んでおりまする。流石は殿の策。見事に敵はまりました」


 いつもの超信頼の目攻撃を受けて、MPが徐々に削られてる光秀です。


 今回はきちんと作戦を教えてもらった。

 もちろん骸骨流「お前に栄誉を」スキルを使ったのさ!


 そしたらなによ?

 一気に浅井を包囲撃滅?

 出来るの? そんなこと!

 敵は勇猛な軍勢じゃなかったっけ?

 少なくともゲームなんかじゃそうだし、正史でも二倍以上いる織田勢を敗退寸前まで苦しめたんじゃ?


「先の北伊勢攻略と甲賀・南近江の商人への調略により、近江を中心とした各街道は整備されつつあります。そして今回、殿の慧眼けいがんにより未然に浅井の離反が分かっておりました故、各所に阻塞そさいの資材を用意できておりまする。これにて大殿(信長)の中軍は万全の態勢で、浅井の軍勢と正面から激突し防ぎます」



 そうなんだよ。


「浅井長政って嫌いだよ。どうせお市っちゃんを離縁する気でしょ」


 とか呟いたら、また半兵衛っちが


「はっ。誠でございまするか? では準備を」


 とか言っちゃって、静々と走って行っちゃった。


 あの走り方がコワイ。

 身体弱いからあまり体力消耗しないようにね、と、心遣いした筈なんだけど、逆に体力使いそうな走り方になっちゃって。


 あとは、事前の内応だね。

 だいたい合戦って、事前の内応次第で決まっちゃう。


「で、内応に応じた浅井の国衆は?」


「はっ。全てにございまする」


 え“?


 今空耳?


「聞き洩らした。今一度頼む」


「失礼いたしました。でははっきりと」


 半兵衛っち、真面目腐った顔で嬉しそうに報告してきた。


「浅井の国衆、全てが内応に承諾しております。誓紙もこちらに」




 ああ……?

 あ、姉川の戦い、どこへ行っちゃった?

 磯野くんなんか、絶対裏切らない忠臣じゃなかったの?


 え?

 親友の中島っていう国衆を寝返らせたら堕ちたって?

 そのためにカオリという女忍者を使ったと?

 そしたら磯野家全体が寝返ったと。


 なんだか複雑な人間関係らしいが、人死にが出なかっただけよかったのか?




 でも。

 信ちゃんが怖いっす。

 あんまり調略した国衆多いと直轄地にできるとこ少なくなるんで、調略の勝手働きは厳禁。


 でも半兵衛っち、働き過ぎだよ?

 光秀、楽だけどさ。

 喘息こじらさないでね。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 姉川の合戦、無くなってしまいましたW

 次はその後始末。

 どうなる事やら。



「アゲハ、カオリという忍者、知っているです。八方美人手裏剣投げるです。危険です」


 もし楽しい作品だと思いましたら、物凄く面白い時は★3

 まあまあだねという場合は★1つで評価願います♪


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